だから、一人でいたい。
これを文章に書かず、誰にも聞こえないように心のなかで呟けば、一人でいられると思うんだけど。
この文章のように誰かに見られる形にしてしまって、当然のようにハートが送られ、反応が返ってきてしまえば、たちまち一人の世界観は壊れてしまう。
思えば僕たちは音のない世界に生きていない。
真の文章とやらを書いた覚えもない。
人生に失敗したニートよろしく自室に引きこもっても、誰かが作った人工物と誰かが汲んだ水と食べ物、誰かの記憶を詰めたものを見て聴き続けている。
それを一人でいたい、と世の中は定義している。
あまりにも甘い。
一人でいたい、と思えるのは感情の発露的に浮かび上がったあの時だけであり、もう気づいても遅い実現不可能な将来の夢であり。
過去のどれを振り返ろうと、どこにも孤独は見つからない。
人でいる限り、誰かが作った製品と人の努力の賜物が染み付いた空気が漂っていて、いくら換気をしたってやってこない。
赤子のように、たった今生まれた新鮮な空気なんて、この世界のどこを探したってないんだ。
あっても宇宙くらいだろうか。
地球の表面の宇宙は、誰かが到達している。
ということは月にいかないと? 月も誰かがいるだろうし、そして宇宙ゴミが数多ある隕石の欠片のごとく浮遊しているのだから、本質的には難しいかもしれない。
だから一人でいたいって思うんだ。
そんな難しいことを思いながら、過ぎ去りつつある将来の夢の夢を吸って。
誰かが吸って、誰かが吐いた空気を。
自分が吸って、それを吐いて。
また吸って、吐いて。
そんな事を何度も繰り返す度に、一人になりたいなどと言って、周りに逃避の欠片を落とし、結局誰かが作ったものを手にとって、それを生き甲斐にしている。
だから、一人でいたい。
そう思って、思い続けていけば、やがて気付くと思う。
目を閉じた心のなか、命を投げ捨てたあとの余寒。
どちらも埋没毛のようなもので、いつ芽が出るかはよくわからない。
それでも生き続けるしかない。
8/1/2024, 9:51:51 AM