桜の木の下には死体が埋まっている。
誰が言い出したのだろうか、そんなこと。
あまりにも美しすぎるその薄紅色に魅入られたからだろうから。
ザァ……と春一番が花びらを散らしていく。
花が吹雪いていく。お前を、何処かに連れて行く。
誰なんだ、お前は。
知らないはずのお前が桜の下へと消えていく。
胸が苦しい、真綿でじわじわと締め付けられるような苦しみが広がる。
それなのに俺は未だ、お前を思い出すことができない。
貴方が苦しみに喘ぐ姿が好きだ。
貴方が快楽に溺れ惑う様が好きだ。
自分がこうなったのは貴方のせいだ。
あの時貴方が流した涙は蜜の味がした。
もうお互い元になんて戻れないから
だからどうか、嘆きもがき苦しんで
俺はただ、もう一度お前と話がしたかった。
墓場で酒盛りして、馬鹿なネタで笑い合いたかっただけなんだ。
その時にはお前や奥さん、赤ん坊もいるだろうし、それをただただ少し遠くで優しく見ていたかった。
こういうのをきっと、人は幸せと云うのだろう。
「これ、逃げるでない」
伸ばした手は無理矢理布団へと引き戻される。
強かに打ち付けられた腰、度を超えた快楽が一気に脳天へと突き刺さったみたいだ。
金魚みたいにはくはくと口を開くことしかできない俺を見て、お前の目は三日月に細まる。
現実はあまりにも非情だ。
「逃がさぬよ」
嗚呼そうか。
これは俺への罰なのだ。
俺なんかが少しばかりの幸せを願ってしまったから、天罰が与えられた。
そうでないと、優しかったお前がこんなにも変わるなんておかしいだろう、なァ友よ。
草の上に思いっきり寝っ転がってみる。
芽吹いたばかりの緑の匂いが身体いっぱいに染み込んだ。
こうして季節をゆっくり感じられるようになったのは果たしていつぶりだろうか。
「お兄ちゃん!いた!」
向こうから弾むような声が聞こえてくる。
「ご飯ができましたよ!帰りましょう」
伸ばしてくれた手は自分よりもひとまわりもふたまわりも小さい。
切れ長だがまだどこか幼さを残す丸い瞳がまっすぐこちらを見つめてくれる。
「ありがとう、帰ろうか」
「はい!」
手を繋いで二人で歩き出す。
爽やかな風が背中を優しく押してくれる。
世界が、ぐるぐる揺れている
頭が痛い 吐き気がする 最高に生を感じる エトセトラ
床に転がる沢山のつぶつぶ
白って200色あんねん、
何か誰かが言っていたような気がする
嘘ばっかり
赤いユニコーン
青の歯車
黄色のブラウス
緑のおじさん
紫トマト
橙の海
桃色の空
嗚呼、世界はたった七色でできている!