後ろを振り返った時に、様々に流れ込むモノクロの写真
嗚呼、当時は彩り豊かに時を過ごしていたなァなんて思う
楽しかったことも苦しかったことも全ては今を作り出す
あんな思い出はいらない、君はそう言うかもしれない
でもね、その出来事が今の君を確りと導いて僕に出逢わせてくれたんだよ
泣いてばかりいたからこそ、心を震わすことの美しさを知ったのだ
絶望に打ちひしがれたからこそ、人を信じる喜びを知ったのだ
なァんていう僕だってまだまだ過去に囚われていることは沢山あって
それをひとつずつひとつずつ掬いとって空に返していきたいなァ
痛みを伴う出来事。
指を切ったり、擦りむいて転んだり、所謂怪我というやつである。
もう二度と、もう二度とやらんぞ。
人は愚か。
数こそ減るが、何だかんだまたやるのだ。
それは怪我に限らず、精神的な痛みも右に同じ。
忘れ物して先生に叱られたり、遅刻して上司に怒られたり。
もう二度と、もう二度とやらんぞ。
……人は愚か、である。
陽射しを遮る雲。
それでも雲があるときの方が紫外線が強く射し込むというから不思議だ。
緩やかに緩やかに肌細胞を壊していく。
痛みも何も感じない。
肌の中では少しずつ癌細胞が生まれ、正常な細胞が死んでいく。
それでも痛みは感じない。
私は、そこまで説明したところで生徒たちの表情がやや曇っていることに気がついた。
君が手を振る背中が好きだ。
また会おうと僕が振り返した手には見向きもしないその背中。
ByeBye、またね。
帰り道、嬉しくなって足取り軽く弾むスキップしたりして。
その日の夜、ニュースで君の名前を見てにんまりする。
――何者かによって崖から突き落とされた模様
違うよ、ちゃんと挨拶したじゃない。
確かに君と私は同じ景色を見ていたはずなんだ。
それがいつしか違う捉え方をしていると気付いたのはいつだったか。
「好き」
「私も」
「大好き」
「私も」
「お慕いしております」
「ありがとう」
「愛してます」
応えることなどできない。
同じものを食べて同じものを見て共に生活をしてきたのに、何が二人を違えたのか。
軋む床、押し付けられた背中。
逃げ出そうと思えばできるのに、君の涙が私をそうさせてくれなかった。