まにこ

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2/7/2025, 2:31:47 AM

鳥の囀りが聞こえる。
空は段々と白み、森たちはゆっくりと目覚める。
遠いところから陽の光が家の中へと差し込み、少年はそれで瞳を開いた。
隣の布団で眠る実父を起こさないように、ヤカンにお湯を沸かす。
今日も一日が始まる。
どうか穏やかな日になりますように、ポストにことり、手紙の届く音がした。

2/6/2025, 12:37:07 AM

しん、と静まり返った畳の部屋。
どこか厳かな気持ちで座布団へと座る。
お鈴を鳴らせば、それは見えない世界との架け橋の合図。
仏壇の前で両手を合わせて合掌。
この短い間だけはもう会えなくなったあなたと心が繋がっている気がして、ほんのり勇気をもらえるのだ。
いつもありがとう、必ず伝えるあなたへの感謝はきっと伝わっている。

2/4/2025, 9:31:13 PM

時を束ねたように、後から後から出るわ出るわ写真の束が。
無論、写真以外にもアルバムだったりそういう類のものは、押し入れに所狭しと押し込められていた。
「あの人、こんなにも笑う人だったのね」
一枚の写真を慈しむように眺めるあなたの横顔。
私にとってのあの人は、常に顰めっ面で口を開けば罵詈雑言を浴びせる鬼のような人だった。
「せめて私の中ではこれからもずっと笑顔でいてほしいわ」
要らない写真やアルバムを殆どゴミ袋に放り込んだけれども、そのたった一枚の写真だけは最期まで捨てられなかった。

2/4/2025, 2:34:43 AM

最初から期待なんてしていない。
だってここは「そういう」場所だから。
「今宵もお主と話をしに来たぞ」
なのに、最近太客になった此奴はどこか変だ。
高い金を気前よく払う割に、初めて会った時から指一本触れてきやしない。
畳の上にごろんと横になり、肘掛けに腕を乗せてぷかぷかと煙管から煙を吐き出す白髪の男。
畜生、バカにしやがって。
「御前様……」
自分の着物を肌蹴させ、淡く桃色に色付く粒をこれみよがしに見せつけてやるも、鼻息で一蹴されただけだった。
「ワシはの、御為倒しが嫌いでな」
他ならぬお主とはそのような関係になりたくないのじゃよ
一気に吹き付けられた煙。いきなりのことで噎せてしまう。
「心の通わぬ夜伽はせぬ」
また来るよ。
男はそう呟くとゆらりと立ち上がり、そのまま襖を閉めて部屋を出て行ってしまった。
酒どころか、茶すら飲まずに帰ってしまった太客。
あの男の腹の中が全く読めないからもどかしい。
下手な憐れみなぞいらない、毎回そう言おうとするのに都度逃げられる。
期待してしまった後の巨大な絶望感は自分が一番よく分かっているから。

2/3/2025, 12:08:06 AM

ゆっくりと指を差し入れる。
そこは侵入者を弾き出そうと柔らかい防壁がやんやりと押し返す。
それを少しずつ少しずつ解しながら、甘い吐息になるまでじっくりじっくり進んでいく。
「隠された手紙を探すってこういうことですよね」
我ながら陳腐な喩えだと思う。
それでもその言葉にカッと赤くなる男の頬を見る限り、満更悪いものでもないらしい。
指がある一点を掠めた途端、ピクンと大きく跳ねる組み敷いた身体。
「みぃつけた」
さてはて、貴方の手紙には何と書いてあるのか。
今からゆっくりとその内容を暴いていこう。

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