まにこ

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1/7/2025, 11:19:30 PM

女は坂道で自転車を漕いでいた。
考えなければならないことはたくさんある。
これからの子どもの進路先、旦那とのコミュニケーション不足のこと、ママ友グループLINEの返信と今晩のご飯を何にするかとか。
坂はどんどん傾斜が急になっていく。
独身の頃は自分だけのことを考えるだけで良かった。
いつの間に、周囲の人間が自分の人生を形作っていくようになっていったのだろう。
じっとりと背中が汗ばむ。もう降りてしまおうか。
その時、後ろから強い風が吹いた。
あと少しだった坂も、勢いのままペダルを踏んで頂上まで一気に駆け上がる。
きっと何もかも大丈夫だ。
なぜだかそう言ってもらえた気がして、女はハンカチでそっと額の汗を拭った。

1/6/2025, 11:47:58 PM

君と一緒ならばどこまでも。
はるか昔、どこかで聞き齧った歯の浮くような台詞である。否、今ではそれがあまりにも心に染みるようになった。
「んっ……ぅ」
胡座をかく自分の上に無理矢理座らせて、突き刺すようにして身体を重ねる。
お前はもう、どこにも逃げられない。暗に身体にそれを分からせているのだ。
君がどんな場所に行こうが逃げようが隠れようが、必ず探し出す。
自分無しでは生きられない身体にしてやろうな。
腰を掴んで再度緩く打ち付けてやった。

1/5/2025, 11:17:55 PM

久しぶりの穏やかな冬の昼下がり。
A子は一人、ベンチで手作り弁当を広げていた。
少しぐらい寒くても、ランチ会で周囲に気を遣うよりはこちらの方がよっぽど心が凪ぐ。
折角の昼休みなのだからこの時間ぐらいは誰にも遠慮なぞしたくない。
どこから嗅ぎつけたのか、おこぼれに預かろうととんできた鳩達が自分の足元をくるくると歩いている。
そんな光景に思わず口元が緩む。
願わくばずっとこんな日々が続けばいいのにな。
タコさんの形に切ったウインナーに箸を伸ばした。

1/4/2025, 10:18:13 PM

朝起きて、隣に貴方がいてくれる喜びは何物にも代えがたい。
昔はよくお兄ちゃんに腕枕してもらったっけ。
その数年後、裸で腕枕してあげることになるとは思いもよらなかったけれども。
否、その時から甘酸っぱいような、それでいてどろどろとした独占欲のような相容れない想いが積み重なっていくことは分かっていた。
それが幾年の時を経て結ばれることになったのは多分幸せで、使い古された言葉を使えばこれが運命とやらなのかもしれない。
嗚呼、もうすぐ起こさなければならない時間だ。
けれどもあと少しだけ、この温かな気持ちを噛み締めさせてほしい。

1/3/2025, 11:25:54 PM

嗚呼今年こそ、今年こそ三人で初日の出を拝みに行きたかったのに。
男の願い虚しく、また新年を布団の上で迎えてしまった。
目が覚めた時には身体はすっかり綺麗にされており、痛む腰と嗄れた喉を除けば……否、除かなくとも心の中はぽかぽかと温かな気持ちに満ち満ちている。
窓から射し込む柔らかな陽射しを、目を細めて暫し見つめていると、やおら障子が静かに開いた。
「おお、起きておったか」
昨晩は随分無理をさせてしまったからのう、と悪びれる様子もなく白髪の男は宣う。その後ろからひょこっと顔を覗かせた背の低い義息子はどこか心配そうにこちらを見守っている。
「……あーあ、今年も初日の出を見られなかったじゃねえか」
「来年こそは必ず見ましょう」
毎年言っているんだがな、それは。と思いつつも、三人で同じ時間を過ごせている幸せに、男は小さく微笑みを浮かべた。

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