まにこ

Open App

女は坂道で自転車を漕いでいた。
考えなければならないことはたくさんある。
これからの子どもの進路先、旦那とのコミュニケーション不足のこと、ママ友グループLINEの返信と今晩のご飯を何にするかとか。
坂はどんどん傾斜が急になっていく。
独身の頃は自分だけのことを考えるだけで良かった。
いつの間に、周囲の人間が自分の人生を形作っていくようになっていったのだろう。
じっとりと背中が汗ばむ。もう降りてしまおうか。
その時、後ろから強い風が吹いた。
あと少しだった坂も、勢いのままペダルを踏んで頂上まで一気に駆け上がる。
きっと何もかも大丈夫だ。
なぜだかそう言ってもらえた気がして、女はハンカチでそっと額の汗を拭った。

1/7/2025, 11:19:30 PM