まにこ

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12/28/2024, 11:52:54 PM

「今日こそ貴様を倒す!」
いつもの如く果たし状片手に現れた男を見て、やれやれと肩を落とした。
「実は明日から冬休みでね、もうすぐ家に帰らなきゃならないんだ」
「そ、そうなのか」
あからさまに落胆した様子の男にそっと耳打ちする。
「しばらくは会えないからこれで我慢してね」
ちゅ、と頬に触れるだけの接吻を落とす。その瞬間、火がついたように赤くなる男。果たし状をポトリ、落としてしまった。
「今度は普通に会いに来てくれると嬉しいな」
ニコリと微笑み、くるりと背を向けた。後ろで何やら喚いているようだが、恐らく気にしなくても良さそうだ。

12/27/2024, 11:55:55 PM

ハッと目が覚める。
時計を見たら針が思いきり約束の時間を超えていた。
慌てて傍らにあるスマホを確認するとたくさんの着信履歴が残っている。
その履歴の着信相手に掛け直すも相手は出てくれない。
布団から飛び起き、顔を洗いながら再度電話を掛けるもやはり相手は出てくれなかった。
朝食をすっ飛ばし適当に身支度を整えて家を出る。待ち合わせの場所に全速力で向かう。
冷たい風が肺を冷やす。悴む手を温める手袋なぞ持ち出す余裕は無かった。

12/27/2024, 12:36:54 AM

たとえば盆の上に零れた水ですら、長い時間を掛けて空気中に溶けて消えていくのだ。
今あるものがこれからもあり続けるとは限らない。
君が言ってくれた「好き」という言葉ですら、次の瞬間には刻一刻と変わりゆくというのに。
それに縋り続けることの苦しさと恐ろしさを、私は嫌という程知っている。
だったら最初から応じなければ良い。
「ありがとう」
それだけ言って去ろうとする私の手首を君は確りと掴む。
「信じて……頂けませんか?」
曖昧に微笑むだけの私をどうか許してほしい。

12/26/2024, 12:30:27 AM

有給というものを思い切って使ったのがこれが初めてかもしれない。
これまでは自分がのし上がることしか考えていなかった人生だったから、誰かのために生きる喜びを教えてくれたのは正しくこの二人だ。
これを運命と呼ぶのならば、何と素晴らしく甘美な響きなのだろう。
季節のイベント事なぞ全く気にしていなかったモノクロの毎日に色が付けられていく。
それはあまりにも刺激的で、それでいてとても心地が良い。
「これ、何を考えておる」
「こちらに集中してください」
はしたない声を聞かせたくなくて口を覆い隠そうとした手を優しく絡めとられる。
噛み締めようとした唇にそっと指が差し込まれれば流石に降参するしかない。甘い吐息が漏れる。
「クリスマスは恋人達が過ごす時間だと聞きました」
「ならばお主はワシらと居るのが一番良い」
そんな理屈を捏ねられて半ば無理矢理取らされた休みは全て、文字通り恋人達と過ごすこととなった。
布団の上、跳ねる身体を余すことなく愛されていく。
三人のクリスマスはまだ、始まったばかりだ。

12/24/2024, 11:33:36 PM

「今宵はさんた、とやらが来てくれるのじゃろう?」
「えっ……ああ、まあそうだな」
二つ並べられた布団に座り、さあ寝るかと電気を消そうかと思っていた矢先のことだ。
そんな情報を何処から仕入れたのか知らないが、相棒の曇りなき眼がキラキラとこちらを見ていたので思わず同調してしまった。
「ワシらの所にも来てくれるかの」
「……あー、まあどうだろうな」
所詮子どものための御伽噺なのだが、どうもこの男は真剣に信じ込んでしまっているらしい。
いつの間に準備していたのか、大きくて赤い毛糸の靴下を枕元に置いている。
「良い子にしていたらぷれぜんとが貰えるかの」
「……多分、子どもの所にしか来てくれないと思うぜ」
その瞬間、三白眼がより一層大きく見開かれ、すぐにうるうると潤む。よよよ……とボタボタ零れる涙。そんな相棒の姿に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。何も悪いことはしていないのに、ちりちり罪悪感を感じてしまう。だからだろうか、普段ならば絶対に言わない台詞を口にしてしまった。
「……俺じゃダメか?」
「えっ」
「プレゼント……俺じゃ、だめか?」
視界がぐるんと反転する。ちゅ、ちゅと柔らかい接吻の雨が降り注ぐ。
「お主はワシだけのさんたくろうすじゃ」
柄にも無いことを言ってしまったからか、真っ直ぐ見下ろしてくれる相棒の目をまともに見られない。それくらいには心臓がとくんとくんと大騒ぎしている。
「赤くてほんに愛いのう」
二人の夜にクリスマスの祝福が降り注いだ。

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