まにこ

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「今宵はさんた、とやらが来てくれるのじゃろう?」
「えっ……ああ、まあそうだな」
二つ並べられた布団に座り、さあ寝るかと電気を消そうかと思っていた矢先のことだ。
そんな情報を何処から仕入れたのか知らないが、相棒の曇りなき眼がキラキラとこちらを見ていたので思わず同調してしまった。
「ワシらの所にも来てくれるかの」
「……あー、まあどうだろうな」
所詮子どものための御伽噺なのだが、どうもこの男は真剣に信じ込んでしまっているらしい。
いつの間に準備していたのか、大きくて赤い毛糸の靴下を枕元に置いている。
「良い子にしていたらぷれぜんとが貰えるかの」
「……多分、子どもの所にしか来てくれないと思うぜ」
その瞬間、三白眼がより一層大きく見開かれ、すぐにうるうると潤む。よよよ……とボタボタ零れる涙。そんな相棒の姿に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。何も悪いことはしていないのに、ちりちり罪悪感を感じてしまう。だからだろうか、普段ならば絶対に言わない台詞を口にしてしまった。
「……俺じゃダメか?」
「えっ」
「プレゼント……俺じゃ、だめか?」
視界がぐるんと反転する。ちゅ、ちゅと柔らかい接吻の雨が降り注ぐ。
「お主はワシだけのさんたくろうすじゃ」
柄にも無いことを言ってしまったからか、真っ直ぐ見下ろしてくれる相棒の目をまともに見られない。それくらいには心臓がとくんとくんと大騒ぎしている。
「赤くてほんに愛いのう」
二人の夜にクリスマスの祝福が降り注いだ。

12/24/2024, 11:33:36 PM