まにこ

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たとえば盆の上に零れた水ですら、長い時間を掛けて空気中に溶けて消えていくのだ。
今あるものがこれからもあり続けるとは限らない。
君が言ってくれた「好き」という言葉ですら、次の瞬間には刻一刻と変わりゆくというのに。
それに縋り続けることの苦しさと恐ろしさを、私は嫌という程知っている。
だったら最初から応じなければ良い。
「ありがとう」
それだけ言って去ろうとする私の手首を君は確りと掴む。
「信じて……頂けませんか?」
曖昧に微笑むだけの私をどうか許してほしい。

12/27/2024, 12:36:54 AM