ずっとその手を繋いでいたかった。
成長するにつれ、あなたは僕の手を握らなくなった。
これが大人になることならば、僕は子どものままで良いとすら思えた。
再びその手を握る時が来た。
でも決して握り返してはくれない、冷たいその手。
ありがとう、そしてごめんなさい。
白い布で覆われたあなたはもう二度と笑いかけてはくれなかった。
思えば私の人生は謝罪の連続だった。
なるべくひっそりと息を殺して生きているのだけれども、何かと迷惑をかけてしまっていたようで。
そこに佇んでいるだけで嫌がられていた。
ある種のいじめのようなものだった気もする。
叫ばれ罵られ、ついにこの日が来た。
ここに入ればもう二度と外の空気を胸いっぱいに吸い込むことは出来無いと先祖代々言い伝えられてきた。
でも、案外それはそれで良かったのかもしれない。
短かった私の人生、最後は憧れのマイホームでその時を待とう。
ありがとう、ごめんね。
私は黒い羽を羽ばたかせて、紙でできた我が家へと入室した。
あたしはいつも端っこに追いやられているの
何もそうしたくてやってるわけじゃない
でもそうしないと生きていけないから
うまく隠れないとあたしの仲間も皆消されちゃった
いやだわ、今日もまたあの耳をつんざく音と地響きがする
嗚呼目の前で仲間が吸い込まれていく
震えながら隠れているこの時間が1番嫌い
あたし達が一体何をしたって言うの
あ、いやだ、身体が吸い込まr
「愛してる」
言葉は空気に触れた途端に実体を持たずに消えていく。
だからいくらでも吐くことができる。
自分を守る盾としてこれほど有用なものは無い。
心とは裏腹、所詮口先だけの約束事なぞ無いに等しい。
目の前の人物がホッとしたように口元を綻ばせても、こちらの腹の中までは読ませない。
何だかアルコールを浴びるほど飲みたい。
そう思っていたのに気付けば床に散りばめられた色とりどりの宝石たち。
大理石の床には私が描いた模様が広がる。
そこに眠る私はさしずめお姫様といったところかしら。
姫はやたらと煌びやかな服を着ている。
どこにも売っていない私が作った私だけのドレス。
宝石を一つ飲み込んでみる。
世界が一気に輝いて、灰色からショッキングカラーに彩られてゆく。
まだまだ私は世界を堪能する。
嗚呼今夜もまた眠れない。