三人で卓袱台を囲んでご飯をつつく。
その日あったことを面白おかしく話し、それを聞いてもらって笑ったり相槌を打ったり。
はたまた人生の不条理について熱く語ってみたりなんかして。
一緒になって怒ってくれたり泣いてくれたり、そういうので良いのだ。
ツキン、頭が急に痛む。温かい団欒の光景にヒビが入る。
嫌だ、やめてくれ。俺からささやかな幸せを取らないでくれ。
「おはよう」「目が覚めましたか」
痛む頭を押さえることは叶わない。後ろ手に縛られ、足首には鎖。
光を失った眼差しの二人が俺を見下ろしている。
もう一度だけでいい、あの日に戻してほしい。
今度は選択肢を間違えないから、そうすればきっと夢の続きを見られるから。
零れそうになる涙を堪えるようにして俺は再び目を固く閉じた。
暗にその眼差しが全てを物語っていた。
これから来る幸せに輝いたまなこ、いつもよりも上ずんだ声、照れくさそうに微笑む唇、嗚呼それらは全てこちらが与えたかったもの。
そうか、最初からそうすれば良かったのだ。
これからひとつずつお前のその身に幸せを刻み込んでいけば良い。
上塗りの仕方ならもう知っている。
金輪際、こちらから別れることなぞ許さない。
ハッピーエンドが好きだ。
けれどもそれはそれとして可哀想なのも好きだ。
そこには大前提としてハッピーが無ければならない。
愛されているお話が好きだ。
けれどもそれは片方の一方的な執着や独占欲であってほしい。
自称ハピエン厨だが、これを名乗っても良いのか長年疑問だった。
最近になって知った、メリーバッドエンドという概念を。
もしかしたら私はこれが好きなのか。
ハピエン厨ならぬメリバ厨。
嗚呼今日もまた、光と闇の狭間で揺れ動く。
近くて遠い存在、手を伸ばせば触れられるのに触れられない。
僕にとってあの人はそういう人だった。
今になって思う、自分から離れてしまうならばいっそ魂ごと閉じ込めておけば良かったのに、と。
お前死んでも墓にはやらぬ、焼いて粉にして喰うてやる。
顔に掛けられた白い布の下で今、あなたは何を思っているのだろう。
これが僕にとってもあなたにとっても最適解だったんです
今は痛みの方が強くて何も分からないかもしれないけれど、きっとそれも時間が解決してくれます
だってあなたは言ってくれた、愛してるって
僕もそれに酬いたい、ただそれだけなのに
とこしえに生きる、願ってくれたのはあなた
否、それを望んでいたのは僕の方だ
人として愛してくれていたのだと今更気付いた