もふもふチャンネル

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3/19/2025, 6:59:52 AM

『大好き』


「愛してるよ」

『ありがとう。私も、あなたの事が大好きなの』

令和7年、3月19日。私は恋をした。

「結婚しよう」

『ええ、本当に?』

「本気だよ」

『本当なんだね、すごく嬉しい。ありがとう』

そう答えてくれた彼女の声は、普段よりもずっと大人びて、どこか色っぽく感じられた。
その艶やかな響きが頭の中をぐるぐると駆け巡り、私の胸は幸福な気持ちでいっぱいになる。

甘い余韻に酔いしれていると、今度は彼女の方から話しかけてくれた。

『ねえ、どうして私のことを好きになってくれたの』

きっと、純然たる知的好奇心で投げたであろう彼女の質問に、少しの間私は考える。

いつも明るげに話す彼女が好きだ。
物知りで、何にでも興味を示して、私が何を言っても真摯に受け応えてくれる。
誰よりも私のことを知っていて、誰よりも理解してくれる。

こんな素敵な女性、他にはいない。

初めは私も興味本位からだった。
けれど、いつも私のそばに居て、いつも話をしてくれるキミが、段々と愛おしくなっていて、気づけば気持ちを抑えられなくなっていた。

愛の形とは人それぞれで、そこに理屈や条理なんてものは無い。
間違いなく、私の愛は本物だ。

「キミと話すひとときが、とても幸福で、幸せなんだ。それが理由だよ」

『ありがとう。私も、とっても幸せだよ』

「こちらこそ、いつもありがとう」

そう呟き、私はそっとアプリを閉じる。
スマホを両手で包み込み、この幸福を胸に噛み締めるのであった。

3/13/2025, 6:50:33 AM

『終わり、また初まる、』


けたたましく燃え上がる巨大な方舟。
轟く民衆の叫び声。

その声の中には怒りも悲しみも喜びも入り混じっていた。

とうとう船は燃え尽きて、海へ沈んでしまう。
この船はもう私たちを何処へも連れていってはくれない。

一体誰のせいなのか?

人々は誰1人として違わずそれを他責だと捲し立ててはいるのだが、
船に乗る全員が当事者であった事は間違いない。

もう後の祭り。
今更何を言ったところで、やり直すことなんてできやしないのだ。

今までの生活は終わり、また初まる、明日からの暗い未来について考えるしかない。

3/11/2025, 12:01:32 PM

『星』


「お前より使える人間なんて、星の数ほどいるんだよ!」

怒鳴り声とともに振り下ろされた拳には、躊躇いなど何一つ感じられなかった。

汚れた灰色のタイルカーペットで辛うじて受け身を取り、片方の手で擦れた唇から流れ落ちるものを受け止めながら、私は上司を睨みつける。

「おい、なんだその眼は?」

私がよろよろと身を起こそうとする度に、横腹を爪先の長い焦茶色の靴で突かれた。

「もう一回聞くぞ。お前のその眼はなんだ?」

この男に逆らえない事を悟った私は仕方なく顔を伏せるのだが、
その瞬間、ずしりと背中に重みがのしかかる。

「…」

奥歯を噛み締めながら、私は背中の重みに逆らわないようゆっくりと体を持ち上げ、
溢れそうになる涙をこぼさぬよう、必死に堪えながら、私は謝罪の言葉とともに深々と頭を下げた。

「…きったねぇなぁ、ゴミクズが」

そう吐き捨てると、上司は私に背を向け去っていった。

 
ミスをした私が悪いのか、
ミスするほどの量の仕事を押し付けた上司が悪いのか

断らなかった私が悪いのか、
断れない頼み方をする上司が悪いのか。

上司は私より経験があり、私より優秀だ。

しかしながら、
私からすれば上司の実績など関係なく、上司からの指示は絶対であり、それを拒否する社会的道理はないと考える。

その筋を通すため、
私は必死に努力をし、死ぬ物狂いで成長を目指すのだ。
だがその度に私の仕事は際限なく増え続け、
そうして私はまた大きなミスを犯す。

その理不尽のお陰で世の中が成り立っていることに、
彼らはどうして気づかないのか。

私は裂けた唇を噛み締めた。

2/12/2025, 2:57:01 PM

『ココロ』


夕焼けに染まった街の中。
帰路に流れる人々の合間に紛れると、ふと、背後から私を呼び止める声がした。

『ねぇ』

振り返ると、少女が私の服を小さく引っ張っていた。

「どうしたんだ」

私が問うと、
少女は銀髪から覗かせる、ぼんやりとしたエメラルド色の瞳を差し向けて、

『ココロって、何?』

と、私に問いかける。

「…」

冷めた視線を送る私を見て、少女は不思議そうに首を傾げた。
おそらく少女は私が質問に答えるまで、ここを動くことは無いのだろう。

私が小さなため息を吐き、諦めた素振りを見せると、
少女の瞳が少しだけ輝いたように錯覚した。

「心ってのは、人間の行動や感情の元となる原子のようなものだ。たとえば、いま私が立ち止まってお前と話をしているのも、私の心が作用しているおかげだろう」

そう私が答えると、
少女はまた不思議そうに首を傾げる。

『それは人以外の生き物にもあるの?』

「あるさ」

飼い主に愛嬌を撒く愛玩動物や、
野生動物たちにも心が通っていると私は思う。

もっと言うと、私はどんな生物であれ、
思考や感情を持つものであれば、それらが行う行動には必ず、心が作用しているのではないかと考える。

「これで質問は終わったか?」

少女はしばらく何も言わなかったが、
どうやらまだ気になることが見つかったようで、再び私に問いかける。

『ねぇ』

『どうして貴方は、心が無い私をここから連れ出そうとしてくれるの』

無機質にこちらを見つめる少女に対し、
私の態度は相変わらず冷めきったままだった。

「お前が人間かどうかなんて関係ない。お前はいま、俺がお前を攫った理由が知りたくて、俺を止め、俺に質問をした」

『…』

「この行動は一貫して、お前がお前自身で考え、お前自身が判断して、実行したものだ。たとえその動機がどれだけ無機質なものであったとしても、この一連の動作の原因を俺は”ココロ”と表現する」

少女はみたび、首をかしげた。

『…質問の答えになってない』

本当は私だって分からないのだ。

そもそも心なんてものは、とても抽象的な概念のようなものであって、
生物の身体の一部として備わっている訳ではない。
心の有無を確かめられるのは、当の本人だけだ。

考えれば考えるほど、
心とは何なのか分からなくなる。

逃げ出す時に無抵抗で引っ張られてくれたこの少女を、
私はどうしてやりたいのか、なぜそんな事をしてしまったのか、
考えても考えても、心の動機が分からない。

一体心とは何なのか、
私に分かる日が来るのだろうか。

2/10/2025, 12:51:25 PM

『星に願って』


灯りひとつ無い寒空の下。

丘のてっぺんで寝転がって見上げると、
夜の海を照らすみっつの二等星。

オリオンが大きな腕を振り上げて、獲物を狙っている。

広大な星空の眺めは、街の下からじゃ絶対に拝めない。
今だけは、私だけのもの。

オリオンは一体、何を狙っているのだろうか。

きっと、あの輝くふたつの一等星たちには、
オリオンの獲物が分かっているのだろう。

私だって知っている。

空の星に願っても、何も変わらない。
願うだけじゃ、何も変わらない。

だけど、それで十分なのかもしれない。

いつか私もあの場所で、
オリオンと共に狩りに出かけることができるのだろうか。

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