『君に会いたくて』
君の最寄り駅に降り立つと、どうしても辺りを見渡してしまう。いつもと変わらない風景。少し寂れていて、けれど私の最寄り駅よりは栄えている。不思議な感じ。
私はこの駅が好き。まるで君みたいだから。ほんの少しばかりの憂いを帯びた目と、それを塗り替えてしまうような底抜けの明るさが、私には眩しい。
「あれ」
君の声がした。不思議そうに首を傾げて近づいてくる。
「今日なんか用事あるの?」
私はその一言が言えなくて、
「友達待ってるの」
だけが零れ落ちる。今は、間違いじゃないのかもしれない。でも、いつかは間違いになってしまう。そうか、なんて笑ってる君には、伝えられない。
私は君に会いたくてここにいるのに、なんて。
『ずっとこのまま』
「──そんでさぁ、勇気出して誘ってみたんだけど、断られちゃってさぁ……これって脈ナシ!?」
「えー……脈アリだと思うけどなあ」
「だよねぇ!?今回たまたま予定あっただけだよね!?」
「多分ね」
彼は、1歩を踏み出している。けれど、私は立ち止まったまま。むしろ、彼の服の裾を掴んでいるような気がする。
あなたがその人のもとに行ったら、あなたはきっともう戻ってこないでしょ。
私のこの思いをあなたに伝えたら、あなたはきっともう戻ってこないでしょ。
それくらいなら、私はずっとあなたとその人の話を聞いてやる。
そうすればきっと、ずっとこのまま一緒にいれるから。
『涙の跡』
やはり、得体の知れない脅威を恐れて、死んでしまいたいと泣き叫びたくなることはある。そのときの涙は溢れて止まらなくなって、同じ道をポロポロと落ちていく。妙に熱を持った涙が地面を湿らしているのを見て、もっと死んでしまいたくなる。
そういう日々が続くと、死んでやらないと自分が可哀想だと思うようになる。その哀れな私に心を打たれて、静かに涙を流したくなる。私が悲劇のヒロインだと思い込まなければ、生きていけないからだ。死にたいと思いながら、生きたいと願っている時点で、私は阿呆なんだと痛感する。
「たくさん泣いたんだねぇ」
あなたが、私の頬をそっと撫でる。どうやらそこに涙の跡があるらしい。それが嫌で、あなたの手をどけて、私の手で頬を隠す。
「よく頑張ったんだね」
たったその一言で、今までの脅威が全て消え去ってしまうくらいに、涙が止まらなくなる。なんだ、この涙の跡はあなたのせいなのか、と思うまでにそれほど時間はかからなかった。
『もしも過去へと行けるなら』
たまに、あの日に戻れたら、と願うことがある。
もし戻れたのなら。
あの日の私を、力いっぱいに殴り倒して、
全てを失うことになるぞ。
と言って脅してやりたい。
それでも動こうとしない私がいるのを知っているし、
どれだけ私の後悔を語ろうとも無駄なのも知っている。
でも、もし、ほんの少しだけでも、
違う選択をすることができるのなら、
それが未来を大きく変えると知っているから、
どうか私は、
何も知らないふりをして、もう一度あなたとやり直したい。
『届かないのに』
そういえば、バイトのシフトを出さねばと思い、来月の予定を確認していたとき、夏祭りの存在を思い出した。ふと、あの人の顔が浮かんできて、悩んだ挙句に誘ってみた。
ぜひ!
あ、でも俺に春が来なかった時にお願いします!!笑
どうして夏祭りには一緒に行ってくれるのに、そういう関係になってくれることはないんだろう、と少し悲観的になる。まあ、わかってることだけど。あの人に見る目があることくらい。
春は来そうですか笑
すぐに返ってきた返事には、
一生冬ですね笑笑
だそうだ。そんなのに安心してしまう私がいるのも嫌だ。
もし、本当に夏祭りに行けたとき、「私のことを拾ってくれ」とでも言いたい。まあ、絶対届かないんだけどね。