『無色の世界』
日が回る頃、無人の最寄り駅を出ると、真っ暗な道が続いている。何一つ色はなくて、ただ手元のスマホの明かりと、イヤホンから流れる音楽だけが私を照らしている。
こんな生活にはもう飽き飽きだ。ふと思った。何気なく過ごしているこの日々が、愛おしいものだとわかっていながら、こんなことを考えられるなんて阿呆になったものだ。でも、愛すべき日々だとわかっているから、嫌になるのかもしれない。愛そうとも愛せない日々があるから。今日のように、この無色の世界で、ただ一人で、ゆっくりと歩いて帰るこの瞬間を、私はどう愛せばいいのだろう。
いつか、まるで音楽のような綺麗な世界に生きてみたいと思う。この身を捧げてでも、大切にしたいと思える人に出会いたい。きっとそれだけで、私は救われる。こんな世界から救われる。誰か、私に笑いかけて。一人は怖い。怖いの。
「──なんでこんな時間に出歩いてるのさ」
友人が声をかけてきた。偶然、コンビニに行くところにばったり出会ったらしい。まるで運命だった。きっとあなたは、無色の世界に落とされた、虹色の雫。
『春爛漫』
日差しは暖かで、つい眠くなってしまう。
理不尽な説教にも慣れてきてしまった。
最初の頃は、泣きながら帰ってたのになあ。
こんなんでは、私がここにいる理由がない。
なんで私、生きてるの?
ここに必要なの?
誰か教えてほしい。
冷酷なあなたたちにはわからないだろうけど、
私にだって大切なものはあるし、
守りたいものもある。
だからいつも説教を大人しく聞くけれど、
私の存在を否定するあなたたちだけは、
大切なものでさえも壊れてしまえばいいのに。
ふと、風が強く吹いた。
桜の花弁が散っていき、風に乗る。まるで春の吹雪だ。
こんなふうに、儚く散っていく命でありたい。
こんなに暖かくて、優しい日に、
楽しい夢だけの眠りについて、
そのまま目を覚まさないことがどれほど幸せか。
春爛漫の景色を見ていると、
どうにも春の愁いが止まらない。
『もっと知りたい』
私には推しがいる。
何でもできてしまうスーパースター。
彼に不可能の文字はなかった。
彼は歌を作っている。
よく孤独を歌う。
彼の感じている孤独と、私の孤独が同じように見えた。
ねえ、きっと私たち、同じ境遇だよ。
絶対、分かち合える。
きっと運命なんだ。
だから、私はあなたのことをもっと知りたい。
たとえそのスーパースターが偽物だとしても、
あなたの見ている孤独を、私にも見せて。
絶対、私でいっぱいになるから。
『この場所で』
2年前、大好きな先輩たちはこの場所で最後の演舞をやりきった。
それは、1年前の大好きな先輩たちも一緒だった。
いつか来てしまうと思っていた、引退の日。
何度この場所で踊っても、込み上げてくる思いは慣れないものばかりで、涙が零れた。
最後に見る景色は、やけに煌びやかで。
もう見れないと思ってしまえば、その光は滲んでしまって。
「もっと踊ってたかった」
今までの倍踊ったって、同じことを思うくせに、私はそんな後悔をしている。
そう、この場所は、私たちの墓場であると同時に、私たちのチームが生まれ変わる場所でもあるのだ。
『スマイル』
誰かの笑顔は、私を幸せにする。
だから、多少つらいことがあっても、ありがとうって笑いかけてくれるだけで、私は満足する。
だけど、おかしい。
あなたの笑顔だけは、私をドキドキさせる。
そして、ちょっと物足りなくなる。
ねえ、もう少しだけ、私に笑顔を見せて。