泥(カクヨム@mizumannju)

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『雨音に包まれて』

窓の向こうでは、雨が降っている。肌寒いから、布団に潜る。遠くで雨音がする。なんだか憂鬱な気分になる。
最近の私は、何か変だ。嫌なことをずっと考えている。そして、勝手に失望する。今日もそれは変わらなくて、いよいよ自分の阿呆らしさが完全にわかってしまいそうで、ただひたすらに怖かった。
雨が少しずつ、私が固めてきた「優秀」というレッテルを溶かしている。それは私にとって致命的なことだった。私はそのレッテルに沿うように生きてきた。その方が、みんな私を認めてくれたから。けれど、そのレッテルがなければ、私には何も残らない。抜け殻なのだ。だから誰か、誰かが、優秀じゃない私を受け入れてくれたら、と存在しない妄想をするほかない。
じんわりと目元が熱くなる。雨は強くなる。私は一体、何者なんだろう。何のために生きているのだろう。そう思うのも無理はなかった。
電話が鳴った。恐る恐る電話に出ると、向こうで弾むような声がする。

「声聞きたくて!」

私の気持ちも知らないくせに、あなたはそう言う。私は、あなたのことも、自分のことも、本当に馬鹿だと思った。その一言で、救われた気になってしまう私がいるんだもの。

6/12/2025, 1:42:33 AM