泥(カクヨム@mizumannju)

Open App

『傘の中の秘密』

「うげ、傘持ってないのに」
「私の入る?」
「え、やだ」
「濡れちゃうでしょ」
「じゃあささっと駅まで行くよ」
「あちょっと置いてかないでよ!」
あなたは雨の中笑っている。なんだか傘を差すのももったいないくらいにあなたがかっこいいから、ずるい。
でも、あなたは私の傘を待っていた。
「ありがとね、入れてくれて」
ふと言われた言葉にぱっとそちらを向く。照れたように笑うあなたがいる。
「いいの、だって私───」
大きな雨粒がたくさん落ちていく。パラパラと音を立てている。まるで花火みたいに。
あなたは顔を赤くしている。「聞こえなかった」はナシだからね!なんて私も顔を赤くする。
世界でいちばん、馬鹿な2人だと思った。

6/2/2025, 2:24:53 PM