泥(カクヨム@mizumannju)

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『涙の跡』

やはり、得体の知れない脅威を恐れて、死んでしまいたいと泣き叫びたくなることはある。そのときの涙は溢れて止まらなくなって、同じ道をポロポロと落ちていく。妙に熱を持った涙が地面を湿らしているのを見て、もっと死んでしまいたくなる。
そういう日々が続くと、死んでやらないと自分が可哀想だと思うようになる。その哀れな私に心を打たれて、静かに涙を流したくなる。私が悲劇のヒロインだと思い込まなければ、生きていけないからだ。死にたいと思いながら、生きたいと願っている時点で、私は阿呆なんだと痛感する。

「たくさん泣いたんだねぇ」

あなたが、私の頬をそっと撫でる。どうやらそこに涙の跡があるらしい。それが嫌で、あなたの手をどけて、私の手で頬を隠す。

「よく頑張ったんだね」

たったその一言で、今までの脅威が全て消え去ってしまうくらいに、涙が止まらなくなる。なんだ、この涙の跡はあなたのせいなのか、と思うまでにそれほど時間はかからなかった。

7/26/2025, 11:44:24 AM