人に好かれたいとは思わない。
旅行になんて興味無い。
何をやっても、できっこない。
ぜーんぜん、羨ましくもない。
友達なんていないし、1人で平気。
時々、心が拗ねちゃう時ってこんなことを思ったりする。
一つ一つ復唱してみると、負のオーラ出まくりで自分が嫌になった。
本当の所、
何をやっても上手くいく!
旅行!すごい行きたい!
羨ましすぎる!
友達たくさん欲しい!
1人なんて寂しいもの!
なのかな…だとすると
私は、欲張りかもしれない。
やっぱり欲張りだ。
今日も自分の心と、闘いながら生きていく。
※※※※※
【お題】裏返し
鳥は、翼があるから空を飛べる。
大きく翼を広げて、自由自在に。
疲れたら、あなたという安心できる場所に戻り羽を休めさせて…また飛ぶ。
夕暮れの、大学の大教室。爽やかな風に揺れる生成のカーテンがしなやかに踊る。
「ねぇ、疲れた私の羽を休ませてくれる?」
幼なじみの気持ちを探るかのように聞いてみた。3秒ほど目があったあと、彼はくすっと笑った。
「突然何言ってんの?」
確かに…。一気に溝ができてしまう言葉を聞いてしまった。
「変なこと言った、ごめん」
「いや、そうじゃなくて。子どもの鳥って成長して羽が揃ったら空飛ぶだろ? 俺ら、羽が生え揃ってないからまだ飛べないんだって」
首を傾げて、彼の顔を覗き込むと照れくさそうに話を続けた。
「それまで、足掻いて、もがいて生きていこうよ。まだ頼りないけど、いつでも羽を休ませられるように頑張るし…」
突然の言葉に頭が着いてこない。
「え?!」
「もう言わねぇぞ。言わない」
私の背中にはまだ、羽は生えていないけど、無限の可能性がある。
いつか、あの大空へ飛び立てる日まで羽を育てよう。
「帰ろっか」
幼なじみの背中を大きく叩きながら、教室を出た。
※※※※※※※※※※
【お題】鳥のように
山積みになった雑誌。
ハートや星型のペンライト。
コンサートのチケット…
推しのいる生活をして13年。
もうあなた以上に好きになる人なんて出てこないと思っていたのに…
私の目の前に、キラッキラに輝いた彼らが現れてしまった。
「え? この子達…だれ?」
これは、魔法の言葉。
取り憑かれたように、ネットで情報をかき集める。そして、また調べて見てる間に…
沼。
決して嫌いになったわけじゃないと、誰に言い訳してるのか分からない言葉を口走りながら、前の推しのグッズの整理を始めた。
整理しながら、最後にもう一度だけ…
溜め込んだ動画を見よう。
「ああ、好きだったなぁ」
過去形だ…
気持ちは正直だから逆らえない。
覚悟を決めなさいと自分に言い聞かせながら、また新しい世界に飛び込むことに、胸を踊らせた。
…………
【お題】さよならを言う前に
悲しいことがあった。
大切な人が亡くなった。
この世の終わりかと思うくらい泣いて、泣いて、泣いて、この先どうやって生きて行ったらいいんだろうって考えた。
ぽつんと自分だけ時が止まったかのように地獄の苦しみの中にいるのに、空はいつもの同じ場所にあって、世界は回り続ける。
ぽつんと一滴の雨が頬に落ちたかと思うと、一気に太い雨粒が落ちてきた。
「ねぇ、一緒に泣いてくれるの?」
空は何も言わず、雨を降らし続けた。
◆ ◆ ◆
嬉しいことがあった。
誰かにこの思いを共有したくてたまらないくらい、嬉しいことがあった。
でも、周りの人達は私がどんなに嬉しい事があったのかは、分からない。
激しく降っていた雨も上がり、太陽がアスファルトをキラキラと反射させ、眩しくて思わず空を見上げた。
今度は、一緒に笑ってくれる?
…………
【お題】空模様
「だから言ったじゃないのぉ」
悪ふざけをして、コップに入った牛乳をこぼしてしまった。そんなに怒らなくてもいいのに…お母さんだってこぼす時あるし…。
「宿題やったの? 明日の準備は?」
「今やろうと思ってたのにぃ」
お母さんはやろうと思うことを先回りして言ってくる。だから、腹がたった。
もっと私を信じてくれても良いのに!
絶対にお母さんみたいなお母さんには、ならない!!!って思ったことが何度もある。
そうかと思えば、沢山話を聞いてくれて、悲しいことがあった時も、先回りして聞いてくれたっけ。
「なにかあったの?」
おいでって両手を広げて、私を抱きしめてくれた。ぽちゃっとした手がなんだか気持ちよくて、安心した。
時々ふと、生前の母を思い出したりする。
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「…今やろうと思ったのに!じぁあさぁ、お母さん子はどもの頃、言われなくても宿題やってたの?」
その言葉に、ハッとした。
あれ?
私…子どもの頃出来てた?
脳裏に、ため息混じりの「やれやれ」と言った表情の母が浮かんだ。
「ふふふ」
「え?なに?気持ち悪い」
「ごめん、ごめん、おいで」
両手を広げて、娘を抱きしめた。不貞腐れていた表情が急に、赤ちゃんみたいになる。
赤ちゃんをあやす様に、抱きしめた娘の体を左右に動かしながら、「大好きよ」と呟いて窓の外に目をやった。
あなたみたいには絶対にならないと誓ったのに、どうやら、似てきたようですよ…
お母さん。
―――――――
【お題】鏡