鳥は、翼があるから空を飛べる。
大きく翼を広げて、自由自在に。
疲れたら、あなたという安心できる場所に戻り羽を休めさせて…また飛ぶ。
夕暮れの、大学の大教室。爽やかな風に揺れる生成のカーテンがしなやかに踊る。
「ねぇ、疲れた私の羽を休ませてくれる?」
幼なじみの気持ちを探るかのように聞いてみた。3秒ほど目があったあと、彼はくすっと笑った。
「突然何言ってんの?」
確かに…。一気に溝ができてしまう言葉を聞いてしまった。
「変なこと言った、ごめん」
「いや、そうじゃなくて。子どもの鳥って成長して羽が揃ったら空飛ぶだろ? 俺ら、羽が生え揃ってないからまだ飛べないんだって」
首を傾げて、彼の顔を覗き込むと照れくさそうに話を続けた。
「それまで、足掻いて、もがいて生きていこうよ。まだ頼りないけど、いつでも羽を休ませられるように頑張るし…」
突然の言葉に頭が着いてこない。
「え?!」
「もう言わねぇぞ。言わない」
私の背中にはまだ、羽は生えていないけど、無限の可能性がある。
いつか、あの大空へ飛び立てる日まで羽を育てよう。
「帰ろっか」
幼なじみの背中を大きく叩きながら、教室を出た。
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【お題】鳥のように
8/21/2022, 12:59:30 PM