とらた とらお

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5/26/2024, 8:45:48 PM

夜風にあたり月を眺める

なかなか会えないほど離れて暮らす
あの人を想いながら

月が綺麗に見える夜
互いに報告し合ったあの人を

「月が綺麗ですね」なんて言わない
ただ、見える月を報告するだけ

「今日は満月だよ」
「うっすらと西に月が見えるよ」
「きれいに三日月。左下が欠けてる」
ただそれだけの報告を

言われて互いに空を見上げる
必ずしも同じ月が見えるわけではない
雲しか見えない夜もある

それでも、同じ月を眺める

あの人の幸せを願う
そんな優しい目をしながら

5/26/2024, 4:25:18 AM

「今週の天気です。
 最新のシミュレーションによると、今週いっぱいは雨が降り続くとのことです。」

今週も雨か。
人類は目覚ましい進歩を遂げ、かつて予報と呼ばれたものは、予知と言っていいほど確実なものとなった。

雨と言えば雨が降り、晴れと言えば晴れ渡る。
人々は次第に信じ、今ではほとんど全ての人が信じきっている。

かつて、未知なるウイルスが蔓延した時、死者が多く出るという世界的権威の言葉どおり、世界中で死者が多く発生し世界規模での大混乱となった。
ワクチンなるものが世に出て、それによって弱毒化するという噂がたつと、信じる人も増えていき次第に弱毒化していった。

自分には関係のないところで努力する専門家たちのおかげで、未来は予知可能な世界へと変貌していったのだ。

かつて、天気予報と呼ばれていた時代、人々はその精度に半信半疑だったようだ。実際、母に聞いた話だと気象予報士なる人が「明日は晴れるでしょう」と言っても、どうせ外れると皆が言い、実際に外れていたようだ。

今では考えられない、不便な世界だと感じた。

現在、人類を脅かしているのは異常気象に伴う大災害だ。
過去に「異常気象は加速する」という説が唱えられ、世界的権威がこぞって賛同した。そして、そのとおりの世界となっている。

シミュレーションの結果、世界が崩壊すると出れば、人々はそれを信じ、実際に崩壊するはずだ。



『人間とは哀れなものよ。己らにその力が備わっているとも知らず、人の言葉を信じ、そして自らを幸にも不幸にもする。
 飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこの事だな…。』

5/25/2024, 12:20:53 AM

(題目しらず)

聞き慣れた声で目を覚ます…

朝の目覚ましは小鳥のさえずり

小粋なことを地球はしてくる

5/20/2024, 4:25:21 AM

絶望の世界…、そこでいったい何が起こるのか。

朝、目を覚ます。
体操の曲にもある、希望の朝だ。
だが…、そんなものはどこにもない。

虚ろな目で前を見る。
あるはずの色が消え、灰色の世界。
色を色と認識できない世界だ。

前に一歩踏み出すにも何の感情もない。
ただ、足を前に動かすだけ。
それだけだ。
それは時に重く、時に苦しく、
時に心を握りつぶそうとしてくる。

次第に世界から切り離される。
読んでいた文字は空へと逃げていき
気づくと何もない世界にぽつんと1人立たされる。
それに気づいて振り出しに戻るが、
結局同じことを繰り返すばかり。

やがて物語の世界も歪んでいき、
文字が文字と踊りだす。
人の苦しみも素知らぬ顔で、
それはそれは楽しそうに、
大小に変化(へんげ)して代わる代わる踊りだす。
それはまるでフォークダンスのように。
そして同時にメリーゴーランドのように。

立っているのもつらい世界で、
座ることも許されない。
どんなに歩みが遅くとも、
前に進むことを余儀なくされる。

何故ならば、立ち止まると途端に
すぐ背後まで迫り来る漆黒の闇に
飲み込まれてしまうからだ。
自らを死の世界へと葬り去る漆黒の闇に。

誰もいない荒野の世界を
月さえも消えた闇の世界を
ただひたすらに前へ前へと歩を進めていく。

崖が目の前に立ち塞がろうが
イバラに深く傷つけられようが
とにかく前へ前へと進まなければならない。

この苦しみがいつまで続くのか。
終わりの見えない荒野を前に
人はふと、思ってしまうことがある。

もう自分は立ち止まってしまってもよいのではないか?
いっそのこと漆黒の闇に飛び込んでしまった方が苦しむことなく済むのではないか?

自分を支えていたはずの
最後の砦のはずの自分の心が
悪魔のように囁きかける。

つい、後ろを見据えてしまう。
そこには、刻々と迫り来る漆黒の闇がある。
わずかばかりの間逡巡し
諦めて前へと向き直り歩を進める。

一歩、また一歩と。
虚ろな目の奥に微かな光をともして。

5/19/2024, 12:59:35 AM

(題目しらず)

私はよく悪夢を見る。

自分ではどうしようもない危機に陥っている時は、ありがたいことにだいたい夢だ。
だいたいと書いたが、現実ではそんな場面に出くわしてないので、全てが夢だ。

あまりにも悪夢を見すぎて、夢の中である考えをするようになった。

「こんな悪いこと、今まで夢の中でしか起こらなかった。だからこれも、きっと夢だ!」

もちろん夢という自覚はない。
現実として起こっている。
夢であれという気持ちを込めた願いに近い。

そして、夢から覚めた時に思う。
「ほんとに夢だった…」と。

しかしこの悪夢、あまりにも現実的すぎてこう思うようにもなった。。
「これはきつい…。だけどこれは、さすがに夢じゃないよな…。なんとかして立ち向かわないと…!」

夢なのである。

もう悪夢には、ほとほと愛想が尽きた。

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