私が処方されている精神薬は
眠気が強いことで有名だ。
晩ご飯後2時間以上空けて
夜寝る前に服薬する。
1日に1回服薬するだけでいい。
快適だ。
ただし、朝はなかなか起きられない。
なんとか起きて、朝ごはんを食べる。
と、そこで目が覚める。
「なんだ…夢か…」
と改めて起き直してまた朝食を摂る。
そして、目が覚める…。
今日はすでに5回は朝食を食べている。
その全てが夢だ…。
我ながら笑える。
遅刻ぎりぎりで今度こそ起きた私は
急いでスーツに着替えて
朝食も摂らず慌てて家から飛び出した。
太らないといいけれど…。
くそぅ…。
むかつく…。
むかつく…!
最後まで本気で頑張らなかった自分に…!
過去の自分に…!
頑張ろうにも頑張れないじゃないかよ…。
頑張れる時はとっくに過ぎちまったんだから…。
過去の葛藤も、怒りも、全て分かるから
責めることもできないけど…。
やれること、諦めずにしてほしかった…。
今は見ることのできない分岐、見てみたかった。
そうすれば、もしかしたら、
この怒りを感じずに済んだかもしれないのに…。
くそぅ……!
強いだと…?
強いだと…!?
どれだけ強かったかもわからない!
自分の実力さえわからないんだから
分かるわけがないよなぁ!?
なに冷静に考えてる!
「先を考えると…」なんて冷静になったふりして。
悔しさをバネにもしないで。
大切な人に、不甲斐ない姿見して…。
それが最後だったんだぞ…。
その次はなかった…。
同じこと…、繰り返してるんじゃない…!!
わくわく
背もたれ周りの機械を
ついキラキラとした目で見回してしまった。
「まるで子供みたいだね 笑」
歯科医のおじちゃんに笑われる。
やってしまった…。
いい歳になった大人がまるで子供のように…。
身体は老け込み始めたが
精神からはまだ子供が抜けきっていない。
たしかに子供の頃、
ことごとく「忘れた」を武器に
子ども心を分かってくれない大人達を見て、
「絶対に子ども心を忘れない大人になるぞ!」
と誓いはした。
誓いはしたが…、本当に忘れないとは。
時折恥ずかしくなってしまう。
だが、ま、子供達には誇れる大人になれたのかもしれない。
そう思って恥ずかしさを忘れることにした。
(題目しらず)
闇のなかを電車が走る
架道橋から眺めるそれは
窓から漏れた微かな光(ひ)が
横に流れる線路を照らし
おぼろ電車と揺れる線路が
ゆらゆらぼんと流れていく
淡く儚いその光景を
過ぎ去りしあとも眺めゆく
「ぼくがお母さんを助けてあげる!」
母にとっては重くもない買い物かごを
半ば奪い取るように両手で抱え上げる。
母のお礼が耳に届かないほど、
それは一生懸命に全身の力を振り絞って
買い物かごを持ち上げ歩いた。
ただただ、役に立ちたいと。
誇らしい息子でありたいという気持ちで。
そんなことも忘れ育ち。
何の役にもたたず、
ただただそこにいるだけの人間に成り下がった。
家のことなぞ母がやってくれると…。
そんな月日を過ごしていたところに、
母が余命宣告を受けた。
唐突だった。
何をしてやれば母のためになるのか。
初めて本気で考えた。
だが悔しいことに何も思い浮かばない。
これまでも一瞬だけ、何かしようとは考えた。
でもやることなすこと他人よりレベルが低い。
それに気づいた瞬間、諦めた。
自分が役に立てると思えなかった。
誇らしい息子でいたい。
誇らしさで、満たされたいのに…。
…しかたがない!
時間がないんだ。