「ぼくがお母さんを助けてあげる!」
母にとっては重くもない買い物かごを
半ば奪い取るように両手で抱え上げる。
母のお礼が耳に届かないほど、
それは一生懸命に全身の力を振り絞って
買い物かごを持ち上げ歩いた。
ただただ、役に立ちたいと。
誇らしい息子でありたいという気持ちで。
そんなことも忘れ育ち。
何の役にもたたず、
ただただそこにいるだけの人間に成り下がった。
家のことなぞ母がやってくれると…。
そんな月日を過ごしていたところに、
母が余命宣告を受けた。
唐突だった。
何をしてやれば母のためになるのか。
初めて本気で考えた。
だが悔しいことに何も思い浮かばない。
これまでも一瞬だけ、何かしようとは考えた。
でもやることなすこと他人よりレベルが低い。
それに気づいた瞬間、諦めた。
自分が役に立てると思えなかった。
誇らしい息子でいたい。
誇らしさで、満たされたいのに…。
…しかたがない!
時間がないんだ。
8/16/2023, 10:35:54 AM