とらた とらお

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7/18/2025, 11:28:45 AM

【題目しらず】

それは奇妙な植物だった。

桃の形をした葉の先端を少し伸ばしたような葉。
ハートと言ってもいい。
その葉は細長い茎についている。
2本の茎がこれまた細いひげ根から延びていた。

どこが奇妙か?
その植物が奇妙なのではない。
その植物が生えている場所が奇妙なのだ。

私にはそれが目と鼻と口がついているように見える。
そのてっぺんには直径10cmほどの穴が開いていた。
中を覗くと薄ピンク色の培地が見える。
その植物はその培地に根を張り、懸命に生きていた。

風が吹けば簡単に倒れてしまいそうなその草は、世間では薬草として珍重されている。
頭痛にホルモン異常、動悸に不安症とあらゆる症状に効果があるらしい。
丸薬にして飲むのが主流だ。

ただし、どこで採れるか、どう生産されているかは限られた生産者しか知らないという。
今日も向かいに座る禄兵衛さんが笑顔で喋りながら飲んでいる。

5/16/2025, 12:19:19 AM

全てを飲み込む深淵の中で
光輝くというのはなかなか出来ないだろう

光さえも飲み込む暗黒の中で
光輝けば消耗するだけだ

どんな逆境にも輝くことはできる
でもそれをすると
周りの人が錯覚する
彼のやっていることは大したことないと

彼の努力は時に怠けていると捉えられ
もっと頑張るようにと叱責される

本当の闇に紛れ込んでしまった時
爆発的に輝くことよりも
息を止めて空気を温存するように
体力気力を温存して
活路が見いだせるところまで
進んでいくことが大切だ

闇が晴れだすその瞬間に
爆発的に光輝けば
光が飲み込まれることなく
世に届く

5/15/2025, 7:28:11 AM

あぁ…落ちていく…
落ちていく…

高く昇った花びらは
ひらりひらひら
落ちていく…

落ちきる前に手のひらで支えたい
でもそれさえもひらりとかわす花びらがある

あぁ…落ちないでくれ…
落ちると苦しい…
周りの酸素がなくなるような
そんな苦しさが私を襲う

でも心配はない
地に落ちた花びらは
その地の肥やしと化すのだから

そう思う他ないだろう…?

5/9/2025, 10:38:18 PM

夢を持て夢を持て
子どもの頃は本当によく言われる
でも夢を持たせておいて
その夢を現実でぶち壊してくるのは
子どもに対して酷な仕打ちであるとも言える

ある女の子がいた
天真爛漫で少し男勝り
スポーツ万能で困っていることもない

彼女は野球が好きだった
彼女には夢があった
「甲子園に出てプロ野球選手になる!」

小学生の彼女は母に言った
「野球部に入りたい!」
母は聞いた
「なんで野球部に入りたいの?」
彼女は言った
「甲子園に出てプロ野球選手になるから(^^)」
母は申し訳なさそうな顔をして言った
「やめときなさい」
彼女は返した
「なんで?他の男の子より私上手いんだよ?」
母は言った
「女の子はプロ野球選手になれないの」
彼女は何を言われているかわからない
母は続けた
「甲子園にも出れない」
彼女はようやく何かを理解して言った
「女の子だから出れないの?」
母は苦しげに言う
「そう…」
彼女はパッと顔を輝かせて言った
「皆下手だから出られなかったんだよ
 大丈夫、私が初の女性選手として出てみせる!」
母は落胆して言った
「ルールで女の子は出れないって決まってるの…」
彼女は現実を知った
「おかしいよ。そんなのおかしいよ!
 女に生まれたからできないの?
 じゃあなんで女に生んだのさ!
 女になんて生まれてきたくなかった!
 なんでこんな体に産んだの?!
 産まないでくれた方がよかった!」
母は苦痛に顔を歪めそうになったが、その顔を見せることはなかった



夢を描け

5/3/2025, 11:41:26 AM

青がどこまでも青くなると
どうなるのだろう
青い空に青い海

青を求めて天高く昇れば
天を突き抜け宇宙へと到達する
濃い青からきっと一気に
闇深い黒へとなるのだろう

青を求めて地底深く潜れば
光も届かぬ深海へと到達する
鮮やかな青に次第に黒が混じりだし
闇深い黒へとなるのだろう

青い青い空と海は
暗黒へと変わるのだった

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