とらた とらお

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【題目しらず】

それは奇妙な植物だった。

桃の形をした葉の先端を少し伸ばしたような葉。
ハートと言ってもいい。
その葉は細長い茎についている。
2本の茎がこれまた細いひげ根から延びていた。

どこが奇妙か?
その植物が奇妙なのではない。
その植物が生えている場所が奇妙なのだ。

私にはそれが目と鼻と口がついているように見える。
そのてっぺんには直径10cmほどの穴が開いていた。
中を覗くと薄ピンク色の培地が見える。
その植物はその培地に根を張り、懸命に生きていた。

風が吹けば簡単に倒れてしまいそうなその草は、世間では薬草として珍重されている。
頭痛にホルモン異常、動悸に不安症とあらゆる症状に効果があるらしい。
丸薬にして飲むのが主流だ。

ただし、どこで採れるか、どう生産されているかは限られた生産者しか知らないという。
今日も向かいに座る禄兵衛さんが笑顔で喋りながら飲んでいる。

7/18/2025, 11:28:45 AM