とらた とらお

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「今週の天気です。
 最新のシミュレーションによると、今週いっぱいは雨が降り続くとのことです。」

今週も雨か。
人類は目覚ましい進歩を遂げ、かつて予報と呼ばれたものは、予知と言っていいほど確実なものとなった。

雨と言えば雨が降り、晴れと言えば晴れ渡る。
人々は次第に信じ、今ではほとんど全ての人が信じきっている。

かつて、未知なるウイルスが蔓延した時、死者が多く出るという世界的権威の言葉どおり、世界中で死者が多く発生し世界規模での大混乱となった。
ワクチンなるものが世に出て、それによって弱毒化するという噂がたつと、信じる人も増えていき次第に弱毒化していった。

自分には関係のないところで努力する専門家たちのおかげで、未来は予知可能な世界へと変貌していったのだ。

かつて、天気予報と呼ばれていた時代、人々はその精度に半信半疑だったようだ。実際、母に聞いた話だと気象予報士なる人が「明日は晴れるでしょう」と言っても、どうせ外れると皆が言い、実際に外れていたようだ。

今では考えられない、不便な世界だと感じた。

現在、人類を脅かしているのは異常気象に伴う大災害だ。
過去に「異常気象は加速する」という説が唱えられ、世界的権威がこぞって賛同した。そして、そのとおりの世界となっている。

シミュレーションの結果、世界が崩壊すると出れば、人々はそれを信じ、実際に崩壊するはずだ。



『人間とは哀れなものよ。己らにその力が備わっているとも知らず、人の言葉を信じ、そして自らを幸にも不幸にもする。
 飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこの事だな…。』

5/26/2024, 4:25:18 AM