絶望の世界…、そこでいったい何が起こるのか。
朝、目を覚ます。
体操の曲にもある、希望の朝だ。
だが…、そんなものはどこにもない。
虚ろな目で前を見る。
あるはずの色が消え、灰色の世界。
色を色と認識できない世界だ。
前に一歩踏み出すにも何の感情もない。
ただ、足を前に動かすだけ。
それだけだ。
それは時に重く、時に苦しく、
時に心を握りつぶそうとしてくる。
次第に世界から切り離される。
読んでいた文字は空へと逃げていき
気づくと何もない世界にぽつんと1人立たされる。
それに気づいて振り出しに戻るが、
結局同じことを繰り返すばかり。
やがて物語の世界も歪んでいき、
文字が文字と踊りだす。
人の苦しみも素知らぬ顔で、
それはそれは楽しそうに、
大小に変化(へんげ)して代わる代わる踊りだす。
それはまるでフォークダンスのように。
そして同時にメリーゴーランドのように。
立っているのもつらい世界で、
座ることも許されない。
どんなに歩みが遅くとも、
前に進むことを余儀なくされる。
何故ならば、立ち止まると途端に
すぐ背後まで迫り来る漆黒の闇に
飲み込まれてしまうからだ。
自らを死の世界へと葬り去る漆黒の闇に。
誰もいない荒野の世界を
月さえも消えた闇の世界を
ただひたすらに前へ前へと歩を進めていく。
崖が目の前に立ち塞がろうが
イバラに深く傷つけられようが
とにかく前へ前へと進まなければならない。
この苦しみがいつまで続くのか。
終わりの見えない荒野を前に
人はふと、思ってしまうことがある。
もう自分は立ち止まってしまってもよいのではないか?
いっそのこと漆黒の闇に飛び込んでしまった方が苦しむことなく済むのではないか?
自分を支えていたはずの
最後の砦のはずの自分の心が
悪魔のように囁きかける。
つい、後ろを見据えてしまう。
そこには、刻々と迫り来る漆黒の闇がある。
わずかばかりの間逡巡し
諦めて前へと向き直り歩を進める。
一歩、また一歩と。
虚ろな目の奥に微かな光をともして。
5/20/2024, 4:25:21 AM