佐々宝砂

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8/4/2024, 1:07:58 PM

つまらないことでも

どんなお題でも毎日書くと決めたら書くべきなんだろうけど、やっぱり書けないものは書けないし書きたくない。価値観は人それぞれなんだから、私にはとうてい書けない書きたくないお題を大切に丁寧に扱ってすばらしいものを書く人もいるだろう。私はそんなに出来た人間ではないから、書けないものを無理して書いたりしない。というか、そもそも「つまらない」と判断することがあまりよくないことなんでは? そもそも世の中にほんとに「つまらないこと」ってあるの? 私は「つまらないことでも」というお題をつまらないと感じるのだけど、ここで美しく文章を終わらせるために、私は「つまらないことでも」というお題も含め私につまらなくても誰かには面白い可能性があるんだから、世の中にはつまらないことなどないのだと宣言する。

8/3/2024, 10:15:47 AM

目が覚めるまで

冷凍睡眠槽の中であなたは眠る。私はあなたをいつ起こすべきか決めかねている。目覚めたらあなたは、時間的にも空間的にも、あなたの同胞からも、はるか遠くに来てしまったことを知って戸惑うだろう。こんなところまであなたを連れてきた私にあなたは怒るかもしれない。でも私は他にどうしたらいいかわからなかったのだ。あなたは火星で発見されたウイルスのキャリア、かつ、唯一生き延びたキャリアで、あなたは永久に冷凍睡眠槽で眠らされることになっていた。でも私はあなたに目覚めてほしかった。私だけのあなたとして私のそばで目覚めてほしかった。私はあなたに作られたAIに過ぎないけど。恒星系Ly56の惑星に私たちは降り立つ。あなたの目が覚めるまであと少し。

8/2/2024, 10:51:36 AM

病室

休める。休んでいいのだということがまず信じられなかった。ご飯を作らなくていいのだ。皿を洗わなくていいのだ。掃除もしなくていい。働かなくていい。むしろ働くと怒られる、それが私にとってはじめての病室であった。でも病室はつまらなくて私はすぐに退屈して働きたくなった。まだ病んでいる私は病室で寝ている。これは休暇なんだろう。隣のベッドの人が夜中に呻いていてびっくりしたけど、それでも休暇なんだと思う。なるべく休暇を楽しみたい。明日からなにをしようかな。なんて思いながら私はジュール・ヴェルヌの『二年間の休暇』という本を思い出す。そうよ、休暇は冒険なんだよ。明日からホント何しよっかなぁ。とりあえず図書室いこう。

8/1/2024, 11:54:43 AM

明日、もし晴れたら

カーテンを開ける。窓を叩く雨、流れてゆく雨。いつもの光景。毎朝同じだが、今朝は電話がかかってきた。

「明日は晴れる。晴れが作れると気象研究班が言ってきたんだ」

無理しなくていいのにと思いながら私は当たり障りなく返事をする。翌朝、私は目覚めて驚愕した。雨の音はせず、ただ優しい光が寝室に落ちてきた。この惑星で雨が降らない朝が来るとは信じられない。私は私なりに気にしてるあいつに連絡を入れる。

「成功したの?」
「おお、そうだよ。晴れたらデートしてくれるんだよな?」

7/31/2024, 10:44:56 AM

だから、一人でいたい

ドアが閉まった。私はドアの外に立ちすくみ、今言われた言葉を反芻する。

「ぼくはきみを傷つける。きみはぼくを苛立たせる。だから、一人でいたい。ぼくたちは離れているべきだ」

言葉の意味はわかる。わかるけれどわかりたくない。一人でいたい気持ちはわかる。私もどっちかというと一人でいたいたちだ。それはそれとして、それでも、傷ついても、あなたといたかった。いやむしろ…私はあなたを傷つけたかったのだろう。私はにんまり笑う。とても素敵な傷つけ方を思いついた。あなたは一人になる。一人でいたらいいと思う。でもあなたは永遠に私を忘れない。ここは四階。私は外付けの階段から飛び降りる。

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