まだ見ぬ景色
VRがすごい世の中になったからな、まだ見ぬ景色は想像力次第だ。こないだは宇治ミルク金時のかき氷の上を身長1cmになって歩いたぜ。あれは面白かった。もちろん誰かが撮影した景色ならだいたい見ることができるし経験できる。存在しない景色だって見られる世の中だからな。でも、だからこそ、俺は願ってやまない。まだ見ぬ景色、誰一人見たことのない、想像したこともない、眠ってみる夢の中で空の向こうにぼんやり霞んだ山のそのまた向こうにあるような、そんな景色を俺は見たいし、見にゆくぞ。
あの夢の続きを
(怖い話が嫌いならバック推奨
ゴミを捨てに行ったんだ。そしたら野良猫がいた。ゴミ捨て場にくる野良猫なんか迷惑なだけだからゴミ袋でバシッと殴ったんだよ。そしたら猫はいなくなった。というか消えちゃった。なんでだろうなと思いつつ家に帰りドアノブを回そうと手を伸ばすと右手の拳が猫の頭になってた。人面瘡じゃなくて猫面瘡? いや冗談じゃないなにこれ困るよ。しみじみ見たがどう見ても猫だ。汚い三毛だ。こんなの私の手じゃないと思って出刃包丁で切り落とした。でもまたすぐに猫が生えてきた。
という夢を見たことがあります。あの夢の続きを見たいですかと聞かれたら私はわりと見たいですが、あなたはこの夢の続きを見たいですか?
クリスマスの過ごし方
クリスマスの過ごし方だと? おい正気で聞いてるのか? うん。マーズエブリィ新聞の囲み記事コラムに書くのか? まあわかった。いいよもう怒らんからそのへんでケーキ食ってなよ。残りたくさんあるぜ? なんならチキンもあるから食っとけよ。で、クリスマスの過ごし方? ここに取材に来たんだから少しは聞いてるか? ここでクリスマスの過ごし方を聞いちゃいかんのだ。なぜか俺に聞くな。ここでクリスマスの過ごし方を聞くとだいたい呪われる。正月早々犬のクソ踏むとかそんくらいだから気にするな。クリスマスはつらくとも正月は楽しかったとかつて呪われたやつも言っとるで。まあ良いお年をな。
大空
輝かしい金管楽器の音が
フォルテのまま終わる
きらきらする残響は
青い大空に解放されてゆく
音楽は終わってしまう
いつもいつも必ずどんな音楽も
残されるわたしは
大空に解放された音をうらやむ
でもわたしのなかで
途切れず続く音楽がある
この呼吸 そして心音
いつかわたしという音楽も終わる
終わったあとのわたしは
あの大空に解放されるだろうか
ベルの音
ベルの音が聞こえる
自転車のベルのような気がする
それにしても何度も鳴る
今は真夜中でここは2階なのに
やっぱりベルの音が聞こえる
むしろ近づいてきた気がする
もうほとんど窓のすぐ下で鳴る
立ち上がって窓を開ける
道路を見下ろすけど誰もいない
何もいない 見えない
でもベルの音が聞こえる
窓を閉めて布団に入る
何かがもぞもぞ動く気配
耳元でベルの音が聞こえる