towa_noburu

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8/21/2025, 10:29:11 AM

「君と飛び立つ」
エンペラーインコのカルジョフは、人が乗れるくらいでかい。まさしくエンペラーの名前に相応しい。
知能が高く、歌もお喋りもとても上手だ。
カルジョフは雛の時に森で弱っているのを保護して以来、ずっと一緒だ。僕は家族があまり好きじゃなかった。いつもカルジョフの悪口を言う。カルジョフは僕の大切な大切な家族なのに。血は繋がってないけど、僕にとっての1番の理解者は間違いなくカルジョフだ。
ある夜、僕はついに決意した。この家を出てみよう。
ありったけの硬貨と簡素なサンドイッチ、それに缶詰数個を鞄に詰めて、僕は窓際から外の世界を一望した。いつもの見慣れた夜の街並みが眼下に広がっている。僕は夜の静けさを肺いっぱいに吸い込んだ。
勇気を出して、首を傾げるカルジョフに声をかける。
「カルジョフ、背中乗せて」
「いいよ。いいよ、シュウ」
カルジョフが僕が背中に乗りやすいよう、首を下げた。カルジョフは背中に飛び乗るのを確認すると、同時に大きな翼をはためかせて家の窓から、飛び立った。
行き先は、まだ見ぬ世界の果て。
カルジョフと2人でどこまでも行こう。
君と飛び立てばどんな未来でもきっと乗り越えられる。カルジョフは陽気に歌を歌った。


「よみちはくらいよ、どこまでも
こどくはぼくのおいかぜだ。
よるをさくおおきなつばさ
どこまでもとんでいけ

8/18/2025, 1:05:28 PM

「足音」
誰もいない
誰も知らない
けれどそこにいる
それは人だったのか
あるいはもっと別の塊だったのか
それでも確かに息をしている

ある時は蹄を踏む音がする
またある時はザァザァと砂を引きずったような音がする
さらにある時は風に踊る枯葉の舞のように小さな音がする

深夜2時、私は気になったので、思い切って音のする方の襖を開けた。
襖の先には渡り廊下とささやかな和風庭園が広がるばかり。雨戸を伝う音がぽしゃん、ぽしゃんと静まり返る庭先の中に響くのみ。私は胸を撫で下ろした。
なんだ、やっぱり気のせいか。
そう思って、また襖の戸を閉めた。
背後から、水音と混じり誰かがそっと庭先へと降り立ったそんな足音が響いた。
しかし、あなたはすでに夢の中。
誰も知らない
誰もいない
けれどそこにいる

8/15/2025, 10:27:52 AM

「!マークじゃ足りない感情」

流星がちょうど僕の庭の草むらに落ちてきた。 
興味本意で匂いを嗅ぐ。どことなく香ばしい…
そう思うないなや、僕は流星を一口で食べてしまった。勢いって怖い。だがしかし、もぐもぐバリバリと噛み砕き、流星を味わった。
なんと、美味しかったのだ。味は…例えるなら、香ばしく甘味なバニラクッキー。
僕の胃酸で溶けた流星。流星すなわち星の残骸。その事実を頭の隅に一瞬よぎったが、すぐに煙のように消えた。
僕は食べ終えると、腹を撫でた。
そして思った。また食べたい。
欲望とは恐ろしい。

以来、僕は流星を探している。
しかし不思議な事に、あの時の食べれると直感で思えたような流星にはなかなか出会えなかった。
あの時食べたあの流星は一体なんだったのだろう。
答えは謎のままだ。
後一つ流星を食べてから、僕の体にある異変が起きた。夜になると、暗闇の中で僕の体は怪しく星あかりのように光るようになってしまったのだ。
どこが特に光るかって?
もちろん、お腹だ。


8/14/2025, 10:43:27 AM

「君が見た景色」
何色でもいい、全てを共有したい。
そんな僕の独占欲。

一つだけでいい。
貴方の見る景色の中で一つだけ、共有したい。
全てをわかりあうなんて不可能だけど
一つだけでいいから。
貴方と同じ宝物を共有したい。
そんな私の願望。



8/12/2025, 10:46:00 AM

「真夏の記憶」
炎天下の中疾走して全てから逃げた夏
何もいらない、何もかも捨てて自我すら捨ててただ声なき声の恐怖に苛まれながら、身を切り走った。
その時の恐怖の残像が10年以上たった今でもチラリと覗く。影を踏むように、後ろを振り向くと、あの夏の記憶が私を黒く染める。
それでも、何もかも壊れてしまった精神でも、残骸は少しずつ生き延び形を変えて、今に適応している
これは奇跡だ。そう言うのは簡単だけど、並大抵の努力では辿り着けない自己再生をやってのけたのだと誇ってもいいかもしれない。
あの夏が今でも呼応する。それでも、未来は続いているんだよ、今をたゆまず生きる限り、最善の選択で貴方の記憶を迎えよう。
真夏の記憶、どうか眠れ。安らかに。

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