towa_noburu

Open App
8/18/2025, 1:05:28 PM

「足音」
誰もいない
誰も知らない
けれどそこにいる
それは人だったのか
あるいはもっと別の塊だったのか
それでも確かに息をしている

ある時は蹄を踏む音がする
またある時はザァザァと砂を引きずったような音がする
さらにある時は風に踊る枯葉の舞のように小さな音がする

深夜2時、私は気になったので、思い切って音のする方の襖を開けた。
襖の先には渡り廊下とささやかな和風庭園が広がるばかり。雨戸を伝う音がぽしゃん、ぽしゃんと静まり返る庭先の中に響くのみ。私は胸を撫で下ろした。
なんだ、やっぱり気のせいか。
そう思って、また襖の戸を閉めた。
背後から、水音と混じり誰かがそっと庭先へと降り立ったそんな足音が響いた。
しかし、あなたはすでに夢の中。
誰も知らない
誰もいない
けれどそこにいる

8/15/2025, 10:27:52 AM

「!マークじゃ足りない感情」

流星がちょうど僕の庭の草むらに落ちてきた。 
興味本意で匂いを嗅ぐ。どことなく香ばしい…
そう思うないなや、僕は流星を一口で食べてしまった。勢いって怖い。だがしかし、もぐもぐバリバリと噛み砕き、流星を味わった。
なんと、美味しかったのだ。味は…例えるなら、香ばしく甘味なバニラクッキー。
僕の胃酸で溶けた流星。流星すなわち星の残骸。その事実を頭の隅に一瞬よぎったが、すぐに煙のように消えた。
僕は食べ終えると、腹を撫でた。
そして思った。また食べたい。
欲望とは恐ろしい。

以来、僕は流星を探している。
しかし不思議な事に、あの時の食べれると直感で思えたような流星にはなかなか出会えなかった。
あの時食べたあの流星は一体なんだったのだろう。
答えは謎のままだ。
後一つ流星を食べてから、僕の体にある異変が起きた。夜になると、暗闇の中で僕の体は怪しく星あかりのように光るようになってしまったのだ。
どこが特に光るかって?
もちろん、お腹だ。


8/14/2025, 10:43:27 AM

「君が見た景色」
何色でもいい、全てを共有したい。
そんな僕の独占欲。

一つだけでいい。
貴方の見る景色の中で一つだけ、共有したい。
全てをわかりあうなんて不可能だけど
一つだけでいいから。
貴方と同じ宝物を共有したい。
そんな私の願望。



8/12/2025, 10:46:00 AM

「真夏の記憶」
炎天下の中疾走して全てから逃げた夏
何もいらない、何もかも捨てて自我すら捨ててただ声なき声の恐怖に苛まれながら、身を切り走った。
その時の恐怖の残像が10年以上たった今でもチラリと覗く。影を踏むように、後ろを振り向くと、あの夏の記憶が私を黒く染める。
それでも、何もかも壊れてしまった精神でも、残骸は少しずつ生き延び形を変えて、今に適応している
これは奇跡だ。そう言うのは簡単だけど、並大抵の努力では辿り着けない自己再生をやってのけたのだと誇ってもいいかもしれない。
あの夏が今でも呼応する。それでも、未来は続いているんだよ、今をたゆまず生きる限り、最善の選択で貴方の記憶を迎えよう。
真夏の記憶、どうか眠れ。安らかに。

8/12/2025, 5:17:29 AM

溢れたアイスクリーム、その雫の向こうで、君が細く微笑んだ。暑さにやられたのかな、熱を帯びた自分の脳は、君の一挙一動に目が離せず、瞬きをするその仕草すらも、愛おしい。
そう、愛おしい。好きだ、でも、愛してるでもなくただ、ただ愛おしい。
「アイス、溢れてるよ」
君の指摘にはっとした僕。気がつくとTシャツにアイスクリームがこぼれ落ちていた。
「ださ、子供か」
君がしょうがないなとでも言うように、笑みをこぼした。拭いてあげようと、手を伸ばした君の手を僕は掴んで、引き寄せた。
「暑い」
そう言う君の髪を撫でた。
愛おしい、と言うにはまだ幼い僕らの関係性。
それでも暑さにやられた脳は点滅信号を発する。
君の存在を僕の中からこぼしたくないのだ。

Next