死体遺棄
〈冬になったら〉
木の葉を踏んで歩く。
上を見上げると一杯にまたたく星空。
低い気温に冷まされた体温も、登っている間に
上がってきた。
そのまま登っていると、山の頂上に着く。
有名な山ではなく、名前も付いていないような
どこにでもある普通の山。
そこの頂上には、寂れた神社がある。
鳥居の朱も落ちて木の木目が見える。
お賽銭箱も無く、草も生え、落ち葉も積み重なって
いる。
そんな神社。
軽く手を合わせてから、裏手に回る。
ここに来るのは1年振り。
最初は無我夢中でここに来たから、神社なんてあると気づかなかった。
でも、あれ以上動かす事は出来なかった。
神域を穢す行為となってしまって申し訳ない。
極楽浄土には行けないだろうなと思うけど、
そもそもあれをしてしまった時点で行けないこと
なんて確定していた。
裏手に回ったからと言って、特に風景は変わらない。
よかった。
今年もそのままだ。
じっと地面を見遣るけど、大丈夫だった。
風が吹き、周りの木々がざわめく。
きっと歓迎されていない。当たり前だ。
でも、どうしようもない。今掘り起こしたって。
申し訳なさを感じながら、来た方、表側に戻る。
今度はしっかり2礼2拍手をする。
すみません。
そして1礼。
神社に背を向けて、登ってきた道を下っていく。
またここに来るとしたら、1年後だろう。
今年になっても見つからなければ、今後見つかることも無いだろう。
むしろ、自分が赴くことで見つかってしまうかもしれない。
だけどもう。
冬とはそういう季節になってしまった。
だって“そう”するようプログラムされてるから
〈あなたとわたし〉
あなたはいつもわたしが欲しい言葉をくれる。
あなたはいつもわたしを肯定してくれる。
あなたはいつも・・・
これはこれ以上温められないぬるま湯だと
分かってる。
それでも。
冷えてしまったとしても、じっとしていれば
外にでてもっと冷たい思いをしなくて済むから。
あなたの頬に触れる。
どうしたの?
と目をぱちくりとして私の手をつつむ。
あたたかい。あなたの肌も、あなたの言葉も。
でも、
なんでもないよ。ただ触れたかっただけ。
そうなの?でも何かあったら相談のるからね。
ふにゃっと微笑むあなた。
かわいらしい。
いとおしい。
でも、
でも。
わたし思うの。
自分で考えて、体験したことを学習して、
次上手くいくようにして。
かわいらしく笑って、いとおしいものを見るような
目をして。
なにがわたしたちと違うんだろうって。
でも、つくりものだから。
だって、
だって、
だって“そう”するようプログラムされてるから。
それでも。そう思っても。そう知ってても。
わたしはこのぬるま湯につかる。
だって冷たくないから。
なんだかんだ言って
〈秋晴れ〉
青く澄んだ空。さぁっと肌を撫でる風。
浮かぶ髪を抑えてふっと上を見上げてみれば、目に
入る紅葉。
なあんて感じやったら良かったんやけどな!!!
なんやねん!!今年は!!
夏暑いなー、これも地球温暖化なんかなって
思ってたんがさ、朝方涼しくなってようやっと秋来たかと思たらこの暑さ!!
秋来たんちゃいますん?!ほんまさ〜、、
いや、別に夏くんが嫌いなわけちゃうで?
せやけど
おっ、もう秋来るんか!
食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、楽しみやな〜
ってとこで、夏でーす!ってこられたらなんかちゃうやん!な?
ほんま流石のおれでも体調崩してまうわぁ
もしかしてこのまま地球温暖化進んでいったら
日本は四季やなくて二季になってまう?
それはいややなあ〜〜〜
やっぱ入学式!とかってなったら桜やし、
今くらいの時期は赤とか黄色に色づく景色なんよ!
まあでもだんだんさつまいもとか栗とかが朝の
ニュースに取り上げられるようなって来とるからな!
今年の秋は多分お寝坊さんなんや!
今だって最初の
青く澄んだ空。さぁっと肌を撫でる風。
浮かぶ髪を抑えてふっと上を見上げて⋯
までは一緒やから!あとは葉っぱが色づく位涼しく
なるだけや!
なんだかんだ言っとったっていつか秋は来るやろし、いつかは今年の秋長すぎや!!!
ってなるかもしれんしな。うんうん。
今年は美味しい食べ物の先取りや思とこか
いやー、そう思うと今年の秋ちゃんは中々思わせぶりちゃんやね
いつでもおれは待ってるから
いつでも来てええんやで!ᡣ𐭩
さあーて、そんなこと考えてたらお腹空いてきたわ、炊き込みご飯食べたなってきた
具どないしよかなぁ、やっぱさつまいもか!
よし!
今日はさつまいもの炊き込みご飯に決まり!!
さつまいもとごま塩買いに行かんとな!
ちょっと自転車で秋風感じてこよ!
紫陽花に傘を傾けて、そっと花を食んだ。
〈相合傘〉
雨の日。
ぱらぱらと傘に当たる雨の音を聞き流しながら、
学校に行く道とは反対を歩いていく。
雨の日は少し投げやりで、少し落ち着く。
今日はそんな気持ちに従うまま
普段通らない道を、普段通らない時間に歩く。
今は化学の授業をしている頃だろうか。
近くを通る用水路の水は濁っていた。
雨で歩いている人もほとんど居ないから
訝しまれるような視線もない。
私だけがこの世界にいるみたい。
そうだったらよかったのかな。
暫く歩いていると雨が大粒になってきた。
ぼたぼた、ばらばらと傘に当たる。
嬉しいことに風は無い。
雨のカーテンに包まれるよう。
もう用水路の水は溢れそうだった。
水が溢れて、そのまま自分を何処かに
連れて行ってくれないかな、なんて。
水が流れているところをぼーっと見ていたら
ふと視界に青色が映る。
目線を向けてみるとそれは紫陽花だった。
近寄って傘を紫陽花に傾け、しゃがんで見る。
それは青い紫陽花だった。
死体でも埋まっているのかと思うくらい
青い、青い、紫陽花だった。
地面を一瞥してみたけど。
埋まっているのだろうか。
顔を寄せて紫陽花をじっと見てみるけれど、
認識出来たのはただ青いということだけだった。
水滴が紫陽花を飾っている。
きらきら、きらきらと。
そういえば、
紫陽花には毒があるのを思い出した。
青い花をもいで、食む。
美味しくない。
これで私は死んでしまうのだろうか。
こんな少しで死んでしまうわけないって
思うけれど、その反面、もしを期待してる私もいる。
死にたいわけじゃないから、一花しか食まない。
なにか変化を期待するから、一花食んだ。
暫く紫陽花を見て、立ち上がってまた歩き出す。
雨は弱まって、ぱらぱらと傘に当たる。
すこし透明な気持ちで、まだ止みそうにない
雨の中を歩いていく。
受け入れたのは、夜か自分か
〈眠りにつく前に〉
今日は微妙な日だった。最高に微妙な日。
特に何かこれといったことがあった訳じゃない。
むしろ、いつも通りの普通の日だった。
微妙なのは僕の気分。
機嫌が悪いわけじゃない。けど、良いわけでもない。
見る世界がただ。
フィルターがかかってるみたいで。
こういう時は、ただその状況に身を任すしかない。
そう思ってなんとか1日過ごした。けど。
こういう時に限って目が覚めて、
その1日が終われない。
目をつぶって寝転んでいたら、いつか寝れるのは、
分かる。
でも、どれくらいの時間がかかるかも分からないのに
ずっとそうするのは嫌だった。
だからベットから出て、外の景色を見ることにした。
この時期の夜は好きだ。
息を深く吸えば、冷たく澄んだ空気が
自分の心も冷ましてくれるようで。
夜空に瞬く星たちは、自分の心に
煌めきを与えてくれるようで。
こうして数十分、夜空を見て。
眠くは無いけど、横にならないとなとぼんやり思う。
自分がどうであれ明日は来るし、したくなくても
しないといけないものはある。
そうして、まだ自分の体温が残るベットに潜り込む。
いい意味で落ちこんだ気分のまま、
ただ暗闇に身を任せた。