「ひな祭りだから、これあげるね」とあの人が気まぐれでおれにくれたこんぺいとう
こんぺいとうなんか好きでもなかったがあの人がくれたものはなぜだがきらきらと輝いて見えた
ひとつぶだけ口に含む 甘い
こんぺいとうを噛み砕しながら横目でちらとあの人を見れば、もうおれのことなんか見てもいない おれの顔すら覚えていないのだろう そういう人だ
それでもおれはこの残りのこんぺいとうを食べられもせず捨てられもせずに机の奥にしまい込む
こんぺいとうは小さなおれのたからものとなった くだらない
お題「ひな祭り」 おまねむ
どんぞこの楽土で、もうずっと血溜まりのなかに埋もれている。あのお方が笑いながらおれを突き落としたその日から。
体に虫が這うような絶望と過ごしているが、大人しくしてりゃあのお方はときおり気紛れで褒美をくれる。
まやかしだ。所詮は夢だ。だがおれにとってはもうこれが唯一の希望なのだ。
所詮はまやかしのあの人の腕の中。
今日もおれは虚構のぬくもりに包まれて、あの人の腕の中で眠る。
ぬくい。まるで本物みたいだ。
お題「たったひとつの希望」 おまねむ
あの人のすべてを飲む込むような瞳が恐ろしくて、遠くへ逃げた。ずっと遠くのあの人が名前すら知らないだろう小さな街へ。
これできっと大丈夫だと一時期は安寧を手に入れた。
だがある日、ふと空を見上げると、雲間の隙間から、あの人の瞳がこちらをじっと見下げているのに、気づいた……。
そこで阿呆なおれはようやく悟った。
あの人の瞳からはただの1人も逃げられやしないのだ。
こんな遠くの街へ、すべてを投げ出して逃げてきたのに、すべては徒労の泡となって消えた。
もうこの部屋のカーテンを開けることはできないだろう。あの人と目が合ってしまうから。
お題「遠くの街へ」 おまねむ
大きくなったあの人が、ちっぽけになったすべてを踏みつぶす様をニュース中継で見ていた
今はふたつ隣の町を歩いているところらしい 大きくなっても、あの人の所作は変わらずに美しいな
おそらく最後の食事になると思われる焦げたチョコのトーストをかじった すこしにがい
じきにわたしの番も来るだろう
お題「小さな命」 おまねむ
きみだけが特別なんだ きみだけを愛しているよとおれに囁くあの人が
求められれば誰にでもそうのたまうことをおれが1番よく知っている
あんたの特別にはなんの価値も無いのだ しかし誰もがそれを切望せずにはいられないのだ 滑稽だとお思いですか ええそうでしょうね
お題「i love you」 おまねむ