あなたの特別はおれだけだと思っていた。「ねえねえ」と少女のような可憐な声で語りかけるのも、屈託の無い笑顔を向けられるのも、「ひみつだよ」とおれに囁く秘め事も、ぜんぶおれだけだと思っていたのに。
誰よりもずっとあなたの特別だと思っていたのに。
でも、あるとき、きづいた……。そんなわけがないだろう。
おれだけ……おれだけが? そんな訳が、なかった……。
誰よりもずっとおろかなのは、おれだった。
お題「誰よりも、ずっと」 おまねむ
あのお方がもたらす結末に、ハッピーエンド以外はありえない。
なぜなら世界の中心を辿ってみるとそこにいるのはあのお方であるから。あのお方が「面白い」と言えばそれはハッピーエンドなのだとされるから。おれが苦痛にのたうちまわっていても、あのお方が笑えばそれは幸せとされるのだ。
イカレてると思うだろう。だがたしかに、あのお方の屈託のない笑顔を見るのは幸せなのだ、
お題「ハッピーエンド」 おまねむ
あのお方の黄金の瞳に見つめられると、いやだ、恐ろしいと思う気持ちとは裏腹に、瞳からは歓喜の涙が止まらない。
そうして身を固まらせているうちに、あのお方はふいと目を逸らしてまるではじめからおれなんて存在しなかったかのように優雅に去っていく。
ねえもう一度おれを見つめてください、おねがい、なんでもあげるから。なんだってあげる、あなたの視界に入るためなら。そう願うほどにあのお方は遠のいていく。おれの存在なんて知りもしないうちに、あのお方は遠のいていく。
お題「見つめられると」 おまねむ
あなたの特別の席に次に座るのは絶対におれだと息巻いていたのに。
ああそもそもそんな席など存在していなかった。
ではあなたがおれに言った「きみは特別だから」はすべてうそだったと言うのですか?
好きでもないのに、誰にでも、あなたはそう言うのですか。
その少女のような囁き声で。屈託のない笑みを携えて。
好きでもないのにあなたはそう囁くのか。クソッタレ。おい、はやく、その席をおれによこせ。
お題「好きじゃないのに」 おまねむ
夢を見ていました。あのお方がおれをあたたかく見下ろしては「きみが特別だよ」と微笑む夢を。
とんだ絵空事です。現実では叶うはずのないばかげた事象です。
でもあのお方が夢から醒める直前……「きみにだけ、とくべつ、あげるね」とおれの手のひらにそっとのせた小さなあめだま。
拳を開くとそのあめだまが夢の中のままひっそりとそこにあるのです。
ばかげているとお思いですか。ですがたしかに、夢から醒めてもおれの手のひらの中にあめだまはあるのです。あのお方がくれた特別なあめだまが。
お題「夢が醒める前に」 おまねむ