空の色が映り込んで真っ赤に瞬く水面を、あのお方はじいっと見つめていた。
逢魔が時、沈みかけて真っ赤にそらが染まるそのいっとき、あのお方は穴を掘るおれを横目にそれをずうっと眺めていた。
おれが「せんせい……ひとりじゃ日が暮れてしまいます せんせい……」と枯れた醜い声であのお方を呼んでも、あのお方はそんなものはまったく聞こえないという様子でただゆらゆらと浜辺を揺れておりました。
そうしておれがようやっと穴を掘り終え、かつて人だったものを運び、そしてそこに砂の布団をすっかりかぶせ終えた時、あのお方はようやく言うのです。
「ね、はやくかえろ わたし、おなかすいちゃった…… おにく、たべたい」
おれにあんなことをさせたあとで、よくそんなことを言える…… そう思いませんか ねえ、あなた……
お題「夕日が沈むころ」 おまねむ
あのお方は、祈られる器量のある人なのだ
祈られる器をしているから、おれみたいな腐ったリンゴのようなやつにまでまとまりつかれて、本当に哀れに思う
あのお方がおれにほほ笑みかける時 あのお方がこちらに気づいて「やあ 待っていたんだよ」とこちらに歩みを進める時
おれ、何回この時を経験しても心臓が壊れた螺巻のおもちゃみたいにはね回って止まらなくなる
わかっている あのお方の優しさは、平等なのだ
わかっている あのお方の優しさは、おれひとりのものじゃない……
あのお方の振りまく愛嬌は……ただの貼り付けた仮面だ……
それでもあのお方にやわらかく介錯されるとき
祈ることを止められなくなる この、狐野郎
お前が……おれ以外に、優しくなけりゃあいいのに……
お題「優しくしないで」 おまねむ
わたしきっと、旅の途中なのでしょう
あのお方に拾い上げて頂くまで 随分長いこと遠回りをしてしまいました 今までのすべてがもう長い夢の事のように思えます
あのお方の腕に抱かれて「きみ、今日は随分遅かったんだね」とひそやかに囁かれるとき
ああわたしもうここで死んでもいいといつもおもう
でもわたしまだ旅の途中
あのお方の糧として頂けるまで わたしまだ旅の途中
お題「旅の途中」 おまねむ
お前は見たことがあるか
窓辺から差し込む朝の日差しのように、こちらをぱちと覗き込むあの黄金の瞳を
部屋の隅に丸まり背を向けていても、つきつきと背中を突き刺すあの業火のような眼差しを
お前きっと、見たことなんかないんだろ……
お題「部屋の隅で」 おまねむ
お前はすべてを焼きつかせる太陽
「そんなに泣かないで かわいい顔が、台無しじゃないか」とおれの涙を恭しくコットンの手袋でぬぐい去るお前は
「ふふ ああ、ぐちゃぐちゃで ハンサムが台無しだよ」とたおやかに微笑むお前が
「ところで きみの名前は なんて言うのだっけ」と小首を傾げてこちらを見あげるお前こそ
お前がおれの世界に帳を下ろした悪魔のくせに……
おれのみちを照らす太陽なのも、あなたなのだ……
お題「泣かないで」 おまねむ