ぎらめく太陽の下で、あのお方の顔が、逆光でよく見えない……
だが確かに、あのお方の唇は「きみこそがわたしの、特別だよ」と! うごいた……
あのお方がこちらに歩み寄って……跪いて歓喜の涙を流すおれの額にキスをする
あつい……溶かされてしまいそうだ……あのお方は、太陽そのもの、なのだから……でももう、なんだっていいよ だっておれは太陽にキスをされた男なのだ
おれはあのお方に溶かされるただゆいいつのアイスクリームなのだ! アハハ アハハ……
あのお方が見下ろすと 床のしみになった、おれ……
お題「太陽の下で」 おまねむ
あのお方の胸ポケットから滑り落ちたボールペンを、「いらないから、あげる」と気まぐれにくれたボールペンを、あのお方にとっては処理する手間がはぶけた…というくらいの感覚だろうただのボールペンを…
おれ今日もそっと握りしめて生きている…
聖書のように、こころの隙間に軛のように刺しこんで
あのお方のたおやかな笑みを思い出す
誰にも渡すものか
これは、おれだけの、あのお方からこぼれ落ちた欠片であるからだ
おれだけの…宝物…だからだ…
お題「宝物」 おまねむ
あのお方がぎゅうとおれの右手を両手で包み込み「きみの手はあたたかいね」とたおやかに微笑むのを思い出す……
氷のようなあのお方の手 同じ人の子であるはずなのに、全く血の通っているとは思えない冷たい手……
冬になるとあのお方の手はよりいっそうに冷たく、真冬の冷気で冷やされた鉛のようになる……
灰のように降り積る雪の日に、あのお方が動かなくなった肉をつつきながら「わたしの手、死んだ人よりも冷たいかも」と笑うのが、とっても愛らしいと、なあお前もそう思うだろう?
お題「冬になったら」 おまねむ
夜景を見つめるおれの背後にあの方が立っている ガラス越しにあのお方の顔が良く見える 端正な、きれいな、かお……
それをウットリ見つめていると、あのお方はおれの手に自らの手を重ねて、耳元でささやいた……
「まぬけづら」、と……
お題「夜景」 おまねむ
あなたの特別はおれだけだと思っていた。「ねえねえ」と少女のような可憐な声で語りかけるのも、屈託の無い笑顔を向けられるのも、「ひみつだよ」とおれに囁く秘め事も、ぜんぶおれだけだと思っていたのに。
誰よりもずっとあなたの特別だと思っていたのに。
でも、あるとき、きづいた……。そんなわけがないだろう。
おれだけ……おれだけが? そんな訳が、なかった……。
誰よりもずっとおろかなのは、おれだった。
お題「誰よりも、ずっと」 おまねむ