あの人のすべてを飲む込むような瞳が恐ろしくて、遠くへ逃げた。ずっと遠くのあの人が名前すら知らないだろう小さな街へ。
これできっと大丈夫だと一時期は安寧を手に入れた。
だがある日、ふと空を見上げると、雲間の隙間から、あの人の瞳がこちらをじっと見下げているのに、気づいた……。
そこで阿呆なおれはようやく悟った。
あの人の瞳からはただの1人も逃げられやしないのだ。
こんな遠くの街へ、すべてを投げ出して逃げてきたのに、すべては徒労の泡となって消えた。
もうこの部屋のカーテンを開けることはできないだろう。あの人と目が合ってしまうから。
お題「遠くの街へ」 おまねむ
2/28/2024, 4:47:57 PM