uni。

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9/4/2023, 2:12:21 AM

寝相でズレたシーツ。

水を煽ったあとのコップ。

手じゃどうにもならなかった袋を開けたハサミ。

いつの間にか落としたパンの欠片。

着てみたらなんか違って脱いだシャツ。

向きの崩れたサンダル。

カゴに入れたはずが零れていた靴下。

ドライヤーのあとの床。


あとちょっと
その元気がなくて
きっといつかの誰かがやってくれるでしょ。

おやすみなさい。


『些細なことでも』

8/2/2023, 12:14:23 PM

重だるい体を無理やり起こして、頭を振る。
寝過ぎてしまった。

ぐしゃりとシワのよった胸元を正し、はみ出た裾をしまう。いつの間にか脱ぎ捨てた靴を探し出してつっかけ、くすんだ鏡で寝癖をなんとか誤魔化した。


持ち物はとりあえず体ひとつだ。
時間が無いのだから、急がねば。
沢山の人が待っているのだから。

転ばないように靴を丁寧に履き直しながらドアに手をかけて、
しかし何故か開かないのだ。

「あれ?」
「すみませーん、誰かいませんかー」
「もしかして、なにか引っかかってるのかな」
「すみませーん」


『病室』

5/28/2023, 3:58:20 PM

「は↑んそ↓で、はんそで↓、はんそで↑?」
「何やってんの…」
「いや、ちょっとわかんなくなっちゃって」

まだまだ明るい空を見上げながら、ひんやりとしたアイスをかじる。彼の持つ空に似た綺麗な色と、私の持つ夏服に似たまっさらな色。

熱で溶けきってしまう前に、早く頬張って仕舞わなければ。
とけて、ドロドロになって、落ちて、ダメになってしまう前に。

ぴとり、と湿った肌の感触は気持ち悪いはずなのに、離れがたくなってしまった。





『半袖』

5/23/2023, 4:51:32 AM

お久しぶりです。
明るい話しではありません。悪しからず。






息が出来なくて、いや、息はできて、苦しくて意識が飛びそうで、それは許されていなくて。
うわごとの様に口から勝手に言葉が流れていく。
「ごめんなさい、許してください、分かりません、ごめんなさい」
手足が重だるくて、冷たくて、なのに指先は火がついたように熱くて、でも感覚がなくて。
「別に欲しいのは謝罪じゃないんだよね。手早く話してくれさえすればこっちとしても問題ないわけ。時間がないんだよ」
そこにいる人が何を言ってるかだとか、それらが誰なのかだとか、何を求められているだとか。頭の中は言葉ではなく感覚が占めていて、なにもかもが塗りつぶされている。
「ほんとに知ってるんですかね」
「いやーだって教えてもらったし、こいつが持ってることに間違いは無いはず」
「なら……」
音が途切れて。

「ちゃんとあったじゃん」
「どう考えても確認不足…」
「なんか言った?」
「猫でもいたんじゃないですか」
「ふふん、にゃ〜にはともあれ、これで怒られなくてすむね」
「早く届けて、貰って、飯食いましょ。焼肉とかどうです?」
「こんな時間にやってるのは絶対やばいだろ」
「腹ごしらえしたら、次の仕事だね」

『昨日へのさよなら、明日との出会い』



3/21/2023, 1:23:44 PM

大変お久しぶりです。
二人ぼっちの、愛の話をどうぞ。



『よし、でーきた』
「今日も作ってくれてありがとうね」

木のトレイに皿を並べて、リビングへ運んでくれる。ぺたぺたと地面を歩く音にいつまでも愛しさが溢れてしまう。ガタガタと椅子を引く振動が、鼓膜と壁を震わせた。

『いただきます』
その声に合わせて、自分も手を合わせる。

『美味っ』
「うんうん、美味しいね」

ニコニコ、と満面の笑みを浮かべて頬張る君。
「あぁもう、ほっぺにソース着いちゃってるよ?」
『うわ、やばっ』
慌てて拭うその姿は、外見に似合わず幼げがあって、仕事に疲れて荒んだ心を和やかにしてくれる。

「『ごちそうさまでした』」
今日は同時に言えた。嬉しいな。

『あー…やっぱ慣れねぇなぁ』
「なにが?」

汚れた食器をそのままに、近くにあるソファへと飛び込んで、唸る。

『別れなきゃよかった…寂しすぎる…』
「私は別れて正解だったと思うけどな」

『一人ぼっちの飯ほど虚しいものは無いな』
「二人ぼっちの美味しいご飯時間じゃない」

彼はそのまま、スマホでなにかし始めてしまった。私はそれをのぞき込むほど趣味は悪くないので、目を逸らしてすっかり静かになった壁を見やる。

「この広い世界の中でずっと、二人ぼっちの生活を続けるって、約束したじゃない。」



『二人ぼっち』

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