大変お久しぶりです。
二人ぼっちの、愛の話をどうぞ。
『よし、でーきた』
「今日も作ってくれてありがとうね」
木のトレイに皿を並べて、リビングへ運んでくれる。ぺたぺたと地面を歩く音にいつまでも愛しさが溢れてしまう。ガタガタと椅子を引く振動が、鼓膜と壁を震わせた。
『いただきます』
その声に合わせて、自分も手を合わせる。
『美味っ』
「うんうん、美味しいね」
ニコニコ、と満面の笑みを浮かべて頬張る君。
「あぁもう、ほっぺにソース着いちゃってるよ?」
『うわ、やばっ』
慌てて拭うその姿は、外見に似合わず幼げがあって、仕事に疲れて荒んだ心を和やかにしてくれる。
「『ごちそうさまでした』」
今日は同時に言えた。嬉しいな。
『あー…やっぱ慣れねぇなぁ』
「なにが?」
汚れた食器をそのままに、近くにあるソファへと飛び込んで、唸る。
『別れなきゃよかった…寂しすぎる…』
「私は別れて正解だったと思うけどな」
『一人ぼっちの飯ほど虚しいものは無いな』
「二人ぼっちの美味しいご飯時間じゃない」
彼はそのまま、スマホでなにかし始めてしまった。私はそれをのぞき込むほど趣味は悪くないので、目を逸らしてすっかり静かになった壁を見やる。
「この広い世界の中でずっと、二人ぼっちの生活を続けるって、約束したじゃない。」
『二人ぼっち』
3/21/2023, 1:23:44 PM