桜月夜

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10/30/2024, 3:57:03 AM

   : もう一つの物語


実はね、このお話しには
もう一つの物語が隠されているの

パタンと本を閉じた瞳が輝いた

君は想像力に長けている
本当にそうなんじゃないかと思うほど
毎回君の話に引き込まれてしまう

今だってそうだ
こうなったらもうとめられない

僕は君の話を聞くのが好きだ

でももっと好きなのは
コロコロ変わる表情かな

その物語の登場人物のように
何にだってなりきってしまう

だから君を見ているだけで…

僕の心の中には、豊かな未来へと
続く一つの物語がある

君の物語の登場人物に
僕の名前があればいいのだが…

至福の笑みを浮かべながら
口いっぱいにケーキを頬張る君

ドキドキとワクワクが入り雑じった瞳に
君を愛してやまない僕の顔が映っていた…


                桜月夜

10/29/2024, 3:26:16 AM

   : 暗がりの中で


真っ暗がりなぼくの心の中に
小さな光が灯ったんだ

まるで蝋燭の火が
優しく揺れるように…

丸みのある淡いオレンジ色が
ぼくに語りかけるように近づいてきて
ぼくの鼻先にキスしたんだ

なんだか照れ臭かったけど
とっても嬉しかった

寂しさで紡がれた鎖が
するするとほどけていったとき
誰かがぼくの頭を優しく撫でながら
名前を呼んでいるのが聞こえた

なおくん、おはよう…

心地好さに包まれながらそっと目を開けると
零れそうな笑顔を向けながら
ぼくを見つめるおばあちゃんがいた

ぼくは独りぼっちじゃないんだ

そう思ったとたん
ぼくのお腹がため息を漏らした

さあさあ、ご飯にしましょうね

ぼくはおばあちゃんの後を追いかけた


                桜月夜

10/24/2024, 12:22:52 PM

   : 行かないで


私はなりふり構わず走った
どこをどう走っているのかもわからない

ただ、この機会を逃してしまえば
もう二度と会えないことを知っていた

どこっ、どこへ行ったの…

微かに聞こえるあの音だけを頼りに
私は尚も走り続ける

いたっ、やっと見つけた!

なのに屋台の親父は
私の姿を見るやいなや
猛スピードで逃げようとする

お願い、待ってぇ~、行かないでぇ~
私の焼き芋~!

私はそう叫びながら
ガバッと起きた

とある休日の昼下がり
娘を眺める母の目が
悲しげに笑っていた…


                 桜月夜

10/24/2024, 3:18:03 AM

   : どこまでも続く青い空


貴方を見送った日も
そう、こんな青い空だった

笑顔でさよならを言おうとしたのに…

貴方は優しく私の頬を拭いながら
ごめんねと呟いた

今でも頬に触れた暖かさを覚えている…

一筋の飛行機雲が振り向きながら
慰めるように微笑んだ


どこまでも続く青い空は
未来に出会う誰かさんと
きっと繋がっている

私はもう泣いていない

だって
新しい毎日が
私を呼んでいるから…


                桜月夜

10/23/2024, 5:58:59 AM

   : 衣替え


よく晴れた日の日曜日
綺麗に洗われた洗濯物を
一枚一枚丁寧に畳んでいく

何故だか母は嬉しそうに微笑んでいる
面倒な筈なのに…

衣替えの時季になると母はいつも
沢山の洋服に話し掛けている
やっぱり嬉しそうな顔で…

私は可愛い二人の子供に恵まれた
そして、優しい旦那様にも…

今ならはっきり分かるよ、お母さん

洋服は大事な家族といつも
寄り添い包んでくれる

だからありがとう、またよろしくねって
声を掛けてくれてたんだね…

私もこの子たちを優しく愛せるように
母が私たちにしてくれたように

…でもちょっと心配だから
  これからも見守っていてね

ありがとう、お母さん…


                 桜月夜

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