桜月夜

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10/21/2024, 6:02:12 AM

   : 始まりはいつも


賭博で八百長がバレてしまい
場の空気に緊張が走った

用心棒の男たちが
互いに合図を送った瞬間
無駄のない動きで金を掻っさらい
奴らの合間を縫って逃げ去った

狭く薄汚れた路地裏に潜み
逃げてきた奴の腕に指を食い込ませ
有無を言わせず腹を刺そうとした

だが女は隠し持ったナイフで
俺の喉を掻き切った

俺は目を見開き
ゴボゴボと息を漏らしながら…

「あなた~、早く起きないと
  ご飯食べちゃうわよ~」

…目を覚ました…

一日の始まりはいつも、これだ…


                桜月夜

10/19/2024, 4:51:34 AM

   : 秋晴れ


涼やかな顔をした秋晴れの空に
さらっと伸びをした雲が
気持ち良さげに横になっている

うだるような暑さが旅に出たあと
ちょっとお邪魔しますよと言わんばかりに
肌に心地よい風が訪れた

きっと長居はしないだろう
身軽に泳ぐ様子で分かる

この束の間の季節が私は好きだ

色の移ろいに心を染め
美味しいもので腹を満たす

あと何度この和(なごみ)を味わえるのやら…

空を見上げ、ぽつりとひとりごちた


                 桜月夜

10/17/2024, 2:46:58 PM

   : 忘れたくても忘れられない


私には忘れたくても忘れられない
悔しい思い出がある

あれは、そう1年程…いや
5、6年前のとある冬の日…ん…
いや確か夏の日だったわ

その日は朝から…いや昼頃から
急に忙しくなって、やっとの思いで
くたくたになった身体を
引きずって家に帰ったの

そして転がるようにお風呂に入ったわ

「あぁ~っ、極楽極楽」と至福の声を響かせ
頑張った自分へのご褒美の
ビールを…いやアイスを…ん?
そうそうプリンを思い浮かべたのよ

さっぱりした緩みきった顔で
冷蔵庫の扉を開けた私は
愕然としたわ

「誰が私のプリンを食べたのよぉ~!」

私は、一人暮らしだ


                 桜月夜

10/16/2024, 1:26:44 PM

   : やわらかな光


やわらかな光が肌に溶ける
ふと顔をあげると
朝の日が色を連れて覗いている

ピンクの秋桜が色を重ね
淡い艶を儚げに纏い
にっこりと微笑んでいる

やさしい風に揺らぐ細い体
愛おしそうに絡み合い
変わる朝の色味を眺めている

あの人はどうしているだろうか…

やわらかな光が風に溶け
私の心をするりとすり抜けた


                桜月夜

10/15/2024, 11:31:39 AM

   : 鋭い眼差し


予期せぬことに時間を取られ
漸く現場へと辿り着く

そこへ思い詰めた女が目に入り
私は足早に歩み寄る

私の存在に気付いたのか
あからさまに緊張が走った

鋭い眼差しが私を貫く

こんなことでひるむ私ではない

殆ど同時に動いた

無駄のない軽やかな仕草で
最後のたまごのパックをゲットする

悔しそうに歪む唇を横目に
私はレジの列へと並んだ


                 桜月夜

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