桜月夜

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10/14/2024, 4:42:41 PM

   : 高く高く


ちぎれ雲が浮かぶ穏やかな空を
君を乗せた飛行機が得意気に
高く高く飛び去っていく

見送りには行かなかった
涙を見せたくなかったから…

夢を語る君の瞳が眩しくて
心から応援したいと思った

だけど…、だけど本当は…

いや、やっぱり君を応援したい
だって僕は君の一番のファンだから


                 桜月夜

10/14/2024, 3:02:31 AM

   :子供のように


君を想うあまり
自分の心に蓋をしてしまった

本当に大切にすべきは
君の心だったのに…

子供のように
僕を見つめる君の瞳に
背を向けなければ
君を永遠に失うことは
なかったのに…

大丈夫
すぐに傍に行くよ

これからはずっと
君の傍に…


                 桜月夜

10/12/2024, 4:22:23 AM

   :カーテン


心地良い風が鼻先を擽る

いつの間にかうとうとしたようだ

微睡む目を風のほうへ向ける

カーテンが木漏れ日と

緩やかにダンスを躍っていた

柔らかな光を纏い込むような

どこまでも優しいダンス

幸せの笑みがこぼれる

体の力が抜けていく

そしてまた、瞼を閉じた…


                 桜月夜

10/10/2024, 3:43:42 AM

   :ココロオドル

ついにやってきた
この時をどれほど待ちわびたことか

心躍る気持ちをひた隠し歩みを進める

そう、松風庵のいちご大福!

指紋がおののくほど柔らかい求肥の中に
丁寧な仕事を施された白餡
これらに溺愛された香り豊かな赤いいちごが
ほんのり透けて見える可愛いフォルム

我慢できずに口に含むと
いちごの甘い泉に溺れそうになり
鼻腔を吹き抜ける甘やかなそよ風に
私は目を閉じ
至福の声を漏らすことしかできない

なんて幸せな時間なのだろう…

手が…抑えられない…
もう一個た~べよっと!


                 桜月夜

10/8/2024, 4:13:56 AM

   :力を込めて

これから任務を遂行する
初めての緊張に体が震える
大丈夫、きっとうまく行く
私にできないことなどない

包丁を逆手に持ち振り上げる
握りしめる手に力が込められる

「あっ、あなた、何をする気なの…」

眼光鋭く声を放つ

「キャベツの千切りです」

一瞬沈黙が走る

「そう…なのね…、わかったからいったん
 包丁を下に置きましょうか…」

私は静かに指示に従った

「キャベツはそのままでいいから…そうね
 玉ねぎの皮を剥いてくれるかしら…」

新たな任務がきた

「はい、お任せください」

私にできないことなどない
少し悪戦苦闘したが…うん、完璧だ

「えぇ~、こっ、これは…らっきょう?」

「義母さんったら、玉ねぎですよ
 もしかして、もう少し剥いたほうが
 よかったですか?」

「いえ、もう十分よ、ありがとう…」

義母が笑顔を浮かべている
心なしか体が小刻みに震えているが
大丈夫、喜んでいる

任務完了

そう、私にできないことなど、ない


                 桜月夜

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