桜月夜

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2/24/2025, 12:32:24 AM

   : 魔法


どうしよう、ねぇどうしよう…

親友の美羽は、まだ迷っているらしい
今日は運命のバレンタインデーだ

こんな時、魔法が使えたらいいのに…

なに、魔法が使えたらどうする気なの?

もちろん決まってるじゃない
直人君が私のことを好きになるようにするのよ

へぇ~、美羽は偽りの心が欲しいんだ

そっ、そうじゃ…

ますますテンションが下がる

いつもの美羽を見せればいいじゃない
美味しそうな顔してばくばく食べるとことか
お腹抱えて思いっきり笑うとことか

なによそれ…

友達が失恋したら、本人よりも
ひどい顔して大泣きするとことか…

美羽は魅力満載じゃない
この良さがわからん男なんて
相手にしなくていいよ!
さぁ行ってこい
あとは私が慰めよう!

なんだかちょっと複雑だけど…わかった
その時は頼んだよ…ありがとう

吹っ切れた美羽の顔は
誰よりも愛らしかった


                 桜月夜

2/23/2025, 1:16:14 AM

   : 君と見た虹


「今日、お散歩どうする?」

雨があがった空を見上げながら
お昼寝から目覚めた娘に聞いてみる

「いくぅ~、ながぐつ はくぅ~!」
目をこすりながら玄関に走っていく

いつもの散歩道には水溜まりが
待ってましたと場所をとっている

ピチャッピチャッピチャッ

やっぱり…そうなるわよね…

お気に入りの長靴なはずなのに
容赦なく水溜まりを踏んでいく

不意に立ち止まったと思ったら
覗き込むようにしゃがみこむ

「ママ~、きてぇ~ きれい~!」

一際大きな水溜まりを覗くと
綺麗な色が並んだ橋がかかっていた

水溜まりごしに君と見た虹は
見つけてもらえて嬉しそうにしている

「ママ~、あっちにもみずたまりあるよぉ~!」

苦笑いしながら娘の背中を見送る虹は
水溜まりをくすぐる風に揺られ
消えるまでの時間を楽しんでいた…


                 桜月夜

2/22/2025, 7:28:41 AM

   : 夜空を駆ける


浮かぬ思いを抱えたまま
仕事帰りに立ち寄った小料理屋

うまく酔えないまま席を立つ背中に
女将が柔らかく声をかけた

「今夜の空は、おしゃべりよ…」

不思議な言葉を肩に乗せたまま
ひらりと暖簾をかき分ける

肩からおりようとしない女将の言葉が
そわそわと俺の視線を上向かせる

その視線の先には
きらびやかな世界が広がっていた

気付けば俺の目どころか
仕事のモヤモヤまでもが
煌めく星たちに釘付けになっている

今夜の空は、おしゃべりよ…

確かに、夜空を駆ける星たちは
みな楽しそうにはしゃいでいる

俺の中にいたモヤモヤが
さっぱりした顔で出ていった

粋なことをしてくれるな、女将…

ほんのり酔った心を抱きしめ
月色に灯る提灯を後にした…


                桜月夜

11/30/2024, 4:13:33 AM

   : 冬のはじまり


まだここにいたいと唇を尖らせ
駄々をこねる雲をなだめすかし
秋がいそいそと帰り支度をしていると
寒そうにブルッと震える雲を連れた風が

いや~、急かせてしまってすまないね~

なんのなんの、構わんよ

と、挨拶を交わす

まさに、冬のはじまりだ

この時季の空は面白い
一期一会の雲たちの会話が
心を和ませてくれる

どんどんと短くなっていく秋だが
それはそれで堪能しているようだ

時間に無駄などないのだと
せっせと色を紡いでいく姿に
つい、わくわくしてしまう

これからわんさか寒くなっていく

こたつにみかん
猫の湯たんぽ
ついでに熱燗
肴は何にしようかな?
温泉もいいなぁ~

ふと見上げた空に、雲が笑っている
どうやら心を読まれたらしい

私は、一杯どう?の仕草をかえし
大切な我が家へと、足を向けた


                桜月夜

11/16/2024, 7:19:00 AM

   : 子猫


小さくうずくまったものが動いた

えっ、こんなところに…子猫?

僕に気づくとよたよたと立ち上がり
おぼつかない足取りで歩いてくる

それにしても、小さすぎる
近くに母猫の姿も見当たらない…

足元にたどり着いた子猫は
震える体全身で話しかけてくる

僕に向けられたか細い鳴き声が
生きたいと切実に訴えかけてくる

僕は子猫が壊れないように
優しく優しく抱き上げた

大丈夫、怖くないからな

そう言いながら頭をそっと撫で
近所にある獣医に診せにいった

目立った問題はないとのことで
ただ、もしこのまま飼うというのであれば
子猫にあう栄養バランスの整ったフードや
子猫が過ごしやすい室内環境を確保
してやれば、すぐに元気になる
あまり心配しなくて大丈夫だよ
もし何かあればいつでも相談に乗るから…

そう頼もしいことを言ってくれた

僕と一緒に暮らすか? そう聞くと
眠たそうにこくんと頷いたようにみえた

しずくと名前をつけた日から
もう何年たっただろうか

甘えん坊の寂しがり屋

膝の上で撫でられるのが好きで
僕の隣で眠るのが好き

僕は、しずくのすべてが大好きで
そう…すべてが愛おしい

ありがとう、しずく

寝ぼけながら僕のお腹を
ふみふみするしずくを
心から幸せにしたいと思った…


                桜月夜

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