かつて夢見た職業の真実を知って辛くなるとしても。
今夢見た土台が揺らいでしまったとしても。
将来夢見るであろう未来に対するものだとしても。
あの夢のつづきを見たいとすら願う。
けれども、夢見る時を間違えてしまったから、冷めゆくぬるま湯になってしまった。
安楽の時はかつての夢の中。現実は幻実を夢見させる。
しかし、現実は不変を突きつける。残酷にも。
そして、冷めゆくぬるま湯の中へと落ちていく。沈むかのようにーー。
ーーあの夢のつづきを見たいのに、見ることはできない。
ぬるま湯を温め直すことはできるのだろうか。できないのだ。残念ながら。
埋もれてしまった技術。暴かれた数は闇の中へと再び葬られた。
それは依存の末路。三度目の嵐の被害者たちーー。
あたたかいね。と彼女は言った。確かにそうだろう。冬晴れの日で風も微風。無いに等しいから。
そうだね。と彼は賛同する。陽の光がちょうどいい。風が吹くまではあたたかい時。
冬の日の陽だまりはなんてあたたかいのだろうか。春まで数ヶ月あるとしても。
冬の日の最高の陽だまりに二人は心が安らいでいた。
車のボンネットに横になっている猫は気持ち良さそうに眠っている。
ホットコーヒーも飲み頃の温度である。
風が吹かなければ最高の日だろう。
空は飛行機が飛んでいる。飛行機雲が軌跡を遺している。
飛行機の軌道はどこへ行くのだろう。ただ、直線を描くのみ。
冬晴れのあたたかい日。そんな日がどこまでも続けばいいのにと願う。
しかし、風が吹けばとたんに崩れ去ってしまう。儚いものでもある。
今度の冬晴れの日はいつ訪れるのだろうか。微風の時はまた訪れるのだろうか。
それは誰にも分からない。吹いている風でさえもーー。
ある人は言った。一秒先は未来だと。しかし、それは現実の一つの側面に過ぎない。
どんな未来への鍵を持っているのだろうか。一般的な人生を送る未来への鍵だろうか。
それとも、自分の力で切り開いていく鍵だろうか。
その手に握られている鍵はどんな鍵なのかは、誰にも分からない。無形であるがゆえに。
しかし、形を作ることはできる。望んだ未来を自分の手で掴むのなら。
されど、多くの人は、一般的な人生を送ることになる。それは楽だから。
水の流れに流れる魚のように、時代の流れに流されていく。楽であるゆえに。イージーモードである。
しかし、時代の流れを作り出すことができるなら、未来は大きく変わっていくだろう。
それは大変な道である。思う通りに行くことは難しい。ハードモードになる。
だが、未来を自分の力で切り開いていくという実感がある。それはイージーモードには無い。
定められたレールに乗ることは良い。しかし、それは安寧であるが脆い。
時代は変わりつつある。かつての安寧は、これからも安寧ではない。脆いゆえに崩れてしまいかねない。
新しい時代を切り開くのは、新しい未来の鍵なのである。
そのためには新たなレールを作る必要がある。脆いものではない。頑丈な未来のレールを。
どちらの未来への鍵も無形であるがゆえに、自らの手で作り出していく必要があるのだーー。
ーー未来への鍵は誰かが作り出すのでは無い。自らの手で作り出していくもの。
誰かに頼っていくものでは無い。自分が自分に頼っていく必要があるのである。
自分の軸を持つ、他人の軸になってはならない。自分の責任は自分で負うものであるためにーー。
星を見る。夜空の下で。美しいとすら感じる。その中で飲むホットココアは美味しい。
流れ星が駈け落ちていく。流星のかけらはどこへ行くのだろう。どこに墜ちていくのだろう。
誰にも分からないとしても、そこに思いを馳せたりする。墜ちていく星はどんな物語を秘めて、地上へと墜ちていくのだろうか。
ただの無機質な塊だとしても、そこに秘められた物語を想像の中で紡ぎ出していく。
流れた軌跡はどのようなものなのか。真実は不明の中だとしても、想像の軌跡は描けるのだろう。
燃え尽きる前の燐然とした美しさ。それに心を打たれていく。星にちなんだクッキーはホットココアとの相性が良くて、これも美味しい。
冬空の天体観測に思いを馳せる。月面のクレーターを見ながらーー。
ーー星のかけらはどこにあるのだろうか。どれだけ探しても、見つかることは無い。
地上に墜ちているものだろうか。それとも、燃え尽きたまま宇宙を漂っているのだろうか。
真相は誰にも分からないだろう。燃え尽きる星自身さえもーー。
リンリンと電話が鳴る。大切の時間に。なのに、電話の表示はフリーダイヤル。
大切な時間を邪魔しておいて、フリーダイヤルとは。拒否して正解である。
赤い表示。それは迷惑電話の表示。出る価値はあるのだろうか。価値は無い。
だから切る。こちらに掛けてくるほうが悪い。カット対象。文句は言えるなら言え。
できないことを知っている。同じ土俵に立つわけない。立たないことで勝利を得る。それが賢いやり方だ。
と言うか、こちらから掛けるなら別に良い。しかし、受ける側にはなりたくない。
それが本音である。嗚呼、それゆえに電話番には向かないのだろう。自分の欠点を知る。
フリーダイヤルは迷惑だが、自分を知れる切っ掛けになったのは良いこと。
リンリンと鳴らさなければいい。バイブレーション機能。それで振動させればいいか。
どうせ、気にしない。掛けてくる友人はLINEで掛けてくるのだからーー。