百瀬御蔭

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11/2/2024, 6:28:05 AM

「じゃあ、おばあちゃんは虹の向こうにいるんだね!」
ぴょんぴょんと跳ねて、虹に手を振る。娘に「ママも」と誘われたら、断れなかった。
夫が息子たちを連れて戻ってきたけど、タイミングが良くて思わず笑ってしまった。
「おばーちゃん!またねー!」
元気だな、なんて思っていたその時だった。


『アイリスの呼び声』
永遠に

10/24/2024, 9:46:10 AM

空母の甲板に男は立っていた。
先ほど離陸したばかりの機体は、水平線の向こう側に消えていく。
武力のない世界はきっと素晴らしいものだろう。だが、それはただの理想に過ぎない──彼女はいつもそう語っていた。
いつか死ぬ、だが今はその時ではない。
祖国の空を飛び立つ彼女に、男は敬礼で見送った。


『遠き青の果てより』
どこまでも続く青い空

10/21/2024, 10:00:10 AM

「エノ、今日は買い出しでいいか?武器の修理もしておきたい」
「わかった。足りないものは……インクとポーション、後は行ってから考える」

 俺とエノはパーティの買い出し担当、あるいは追い出され組。俺が所属するパーティは男女二人ずつの平均的な編成。前衛は盾役の俺とリーダーのアント、後衛が魔法使いのエノと回復役のカーラという割り振りとなっている。堅実な役割分担ではあるし、今まで何事もなく過ごしてきた。しかし、ある程度クラスが上がってきたところで問題は起きた。アントとカーラはその関係性を隠さなくなり、宿での部屋割りを無視して過ごし始めた。他の客にも迷惑が掛かるからやめろと伝えたが、エノが追い出されることになり、今に至る。
 彼女には申し訳ないことをしてしまった。

『夜半に繰り出すは』
始まりはいつも

騎士と魔女シリーズ(wip)

10/15/2024, 3:32:05 PM

 気が付けば、エノの姿を目で追っていた。その一挙手一投足を目に、脳に焼き付けるように見つめている。
 本屋で道具や魔導書を見定める時の真剣な瞳、納得がいく一品を見つけた時の柔和な笑み。話してくれた魔法が戦闘で使われた時は、なんとなく嬉しくなる。

「こういう複雑なものは予め準備しないと……間違っていたら大変だからね」

 魔法陣の転写や薬の調合は見せてくれない。本人曰く、見られていると緊張で強ばってしまうと。本当はその工程も見てみたいが、嫌がる事をするのは最低だし、繊細な作業を邪魔すれば被害は自分たちに飛ぶ。

「エノ、いつもありがとう。お前のおかげで安心して戦える」

 感謝を伝えるのは一度では無い。ほぼ毎回伝えているが、やっぱり慣れないらしい。頬を染めて目を逸らされるのも悪くはない。

 好きな仕草や瞬間は挙げればキリがない。全部好きで仕方がないから。だが、得意の水魔法を放つ瞬間が一番好きだ。薄緑の柔らかな瞳が、魔力を帯びて深い青に染まる。優しい魔法使いは無情な魔女となり、敵を討ち滅ぼす。その中でも、真っ直ぐに敵を見据える姿が美しくて。

「なぁ、エノ。お前はこれからどんな姿を見せてくれるのか……楽しみにしているぜ」


『君の全てを余すことなく』

お題
鋭い眼差し

(#騎士と魔女)

10/9/2024, 8:46:11 AM

「ロランス、今の僕たちにとって一番恐ろしいのは……君が倒れることだ」
「アンセルムの言う通りよ、ここ最近ずっと働き詰めで……」

あぁ、確かに。言われてみればそうなのかもしれない。だが、南部のカダルナスと東部のロエンディアが落とされた。湾岸と工業、二つの主要都市を一気に失った以上、早急に手を打たねばならない。残った部隊を撤退させ、首都の防衛に徹するよう王に進言はしたが……。

「わかった。くれぐれも無理はしないでほしい……君たちがいなくなったら、さすがの私も堪えるから」

アンセルムを筆頭とした奇襲部隊を見送る。彼らの腕は確かだが、一緒に学んだ友人が前線に出るのは今も怖くて仕方がない。マリオンも同じ気持ちのようで、最後まで祈りを捧げていた。

「何かあればエレーヌに声をかけてほしい。私は部屋で眠るとしよう」

マリオンを妹に任せ、部屋に戻る。数日ぶりのベッド、その上で横になるとあっという間だった。



花畑の中を走る獣道。道に沿って歩けば、絵本の中で見たような小さな家が建っている。いつからか、私はそんな夢を見るようになっていた。夢の中だとわかっているから、これはいわゆる明晰夢というものだろう。

「やぁ、待っていたよ」

少し歩いたところ、家の前で彼は待っていた。いつもはノックした後に出てくるはずだが……。

「すまないね、久しぶりに君に会えるのが嬉しくて」

手招きされた先はクッキーとカップ、いつものお茶会セットだった。贅沢はあまりしない方だったし、最近は最低限の食事で済ませていたんだっけ。

「肩の力を抜いて。ここは誰もいないから」

公国の揺籃
wip
束の間の休息

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