百瀬

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「ロランス、今の僕たちにとって一番恐ろしいのは……君が倒れることだ」
「アンセルムの言う通りよ、ここ最近ずっと働き詰めで……」

あぁ、確かに。言われてみればそうなのかもしれない。だが、南部のカダルナスと東部のロエンディアが落とされた。湾岸と工業、二つの主要都市を一気に失った以上、早急に手を打たねばならない。残った部隊を撤退させ、首都の防衛に徹するよう王に進言はしたが……。

「わかった。くれぐれも無理はしないでほしい……君たちがいなくなったら、さすがの私も堪えるから」

アンセルムを筆頭とした奇襲部隊を見送る。彼らの腕は確かだが、一緒に学んだ友人が前線に出るのは今も怖くて仕方がない。マリオンも同じ気持ちのようで、最後まで祈りを捧げていた。

「何かあればエレーヌに声をかけてほしい。私は部屋で眠るとしよう」

マリオンを妹に任せ、部屋に戻る。数日ぶりのベッド、その上で横になるとあっという間だった。



花畑の中を走る獣道。道に沿って歩けば、絵本の中で見たような小さな家が建っている。いつからか、私はそんな夢を見るようになっていた。夢の中だとわかっているから、これはいわゆる明晰夢というものだろう。

「やぁ、待っていたよ」

少し歩いたところ、家の前で彼は待っていた。いつもはノックした後に出てくるはずだが……。

「すまないね、久しぶりに君に会えるのが嬉しくて」

手招きされた先はクッキーとカップ、いつものお茶会セットだった。贅沢はあまりしない方だったし、最近は最低限の食事で済ませていたんだっけ。

「肩の力を抜いて。ここは誰もいないから」

公国の揺籃
wip
束の間の休息

10/9/2024, 8:46:11 AM