百瀬

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 気が付けば、エノの姿を目で追っていた。その一挙手一投足を目に、脳に焼き付けるように見つめている。
 本屋で道具や魔導書を見定める時の真剣な瞳、納得がいく一品を見つけた時の柔和な笑み。話してくれた魔法が戦闘で使われた時は、なんとなく嬉しくなる。

「こういう複雑なものは予め準備しないと……間違っていたら大変だからね」

 魔法陣の転写や薬の調合は見せてくれない。本人曰く、見られていると緊張で強ばってしまうと。本当はその工程も見てみたいが、嫌がる事をするのは最低だし、繊細な作業を邪魔すれば被害は自分たちに飛ぶ。

「エノ、いつもありがとう。お前のおかげで安心して戦える」

 感謝を伝えるのは一度では無い。ほぼ毎回伝えているが、やっぱり慣れないらしい。頬を染めて目を逸らされるのも悪くはない。

 好きな仕草や瞬間は挙げればキリがない。全部好きで仕方がないから。だが、得意の水魔法を放つ瞬間が一番好きだ。薄緑の柔らかな瞳が、魔力を帯びて深い青に染まる。優しい魔法使いは無情な魔女となり、敵を討ち滅ぼす。その中でも、真っ直ぐに敵を見据える姿が美しくて。

「なぁ、エノ。お前はこれからどんな姿を見せてくれるのか……楽しみにしているぜ」


『君の全てを余すことなく』

お題
鋭い眼差し

(#騎士と魔女)

10/15/2024, 3:32:05 PM