轟々と燃える戦火をかき消すこと、この大地から離れること。それはどちらも叶わない話だ。勝者として相手を圧倒することができればそれが一番いい。だが、力なき者を守るためならば、背を向けることも厭わない。私はそうして生き延びてきた。肩を並べた友は一人残らず旅立ったが、私はまだここにいる。
Title「錆びぬ理想」
Theme「逃れられない」
主はここ最近とある男性にお熱らしい。長くはないが、週に何度か電話しているところを見かける。
「ありがとう……明日は、大丈夫」
主が笑った?これは一大事だ!
「うん、吠えたみたいで……良い子だけどね」
好奇心が喉から出て来てしまった。あぁ、いつかその顔を拝ませてもらおうではないか!
Title「飼い主の春」
Theme「また明日」
「紡葵、ありがとう」
柔らかな垂れ目が俺を見つめる。
言葉を探し、文として組み立てているのだろう。
「綾人くんは、命を粗末にするような人じゃない……それに、好きな人がそう言われるのは悲しいから」
言った後に気付いたのか顔を真っ赤にして「後のことは忘れて」と言われたが、それは無理だ。
Title「その勇気に誠意を」
Theme「透明」
「なら、地元の人間として案内してやろう」
彼の申し出は魅力的で、断る理由も今はない。布越しでも大きくて、温かい手。
「オーロラが綺麗に見えるところも押さえておいた。費用は俺が出すから、アレのことを忘れてしまうくらい楽しもうか」
豪快な提案に、繊細な気遣い。
あぁ、そうか。こんなスマートな人が好きなのか。
Title「赤気の観測者」
Theme「理想のあなた」
深く息を吸って。
好きな俳優が、現場に突入するシーンが重なって見える。彼が銃を構えるように、私も携帯を握り直す。
彼氏とはもうやっていけない。
二度も裏切る人間と将来幸せになれるとは到底思えないから。
背中を押してくれたあの男の人は、どこかあの俳優に似ていた気がする。
ドアを開け、レンズを彼らに向けた。
Title「また貴方を応援するために」
Theme「突然の別れ」