百瀬

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5/22/2024, 9:00:04 AM

「紡葵、ありがとう」
柔らかな垂れ目が俺を見つめる。
言葉を探し、文として組み立てているのだろう。
「綾人くんは、命を粗末にするような人じゃない……それに、好きな人がそう言われるのは悲しいから」
言った後に気付いたのか顔を真っ赤にして「後のことは忘れて」と言われたが、それは無理だ。

Title「その勇気に誠意を」
Theme「透明」

5/21/2024, 3:15:16 AM

「なら、地元の人間として案内してやろう」

彼の申し出は魅力的で、断る理由も今はない。布越しでも大きくて、温かい手。

「オーロラが綺麗に見えるところも押さえておいた。費用は俺が出すから、アレのことを忘れてしまうくらい楽しもうか」

豪快な提案に、繊細な気遣い。
あぁ、そうか。こんなスマートな人が好きなのか。

Title「赤気の観測者」
Theme「理想のあなた」

5/20/2024, 8:24:14 AM

深く息を吸って。
好きな俳優が、現場に突入するシーンが重なって見える。彼が銃を構えるように、私も携帯を握り直す。

彼氏とはもうやっていけない。
二度も裏切る人間と将来幸せになれるとは到底思えないから。

背中を押してくれたあの男の人は、どこかあの俳優に似ていた気がする。

ドアを開け、レンズを彼らに向けた。

Title「また貴方を応援するために」
Theme「突然の別れ」

5/18/2024, 12:34:48 PM

まだ帰らないでほしい、そんな気持ちが言葉に出てしまう。
職業柄、自分を偽るのは得意なはずだが……どうも彼女の前では冷静でいられない。

「すまない。だが、これは俺の本心だ」

費用だって出すし、必要な手続きも手伝う。少しでも楽しい時間を過ごしてほしいから。

「……ダメか?」

Title「傷心を貫く」
Theme「恋物語」

5/17/2024, 2:57:25 AM

愛さえあれば何でもできる?
それは無理な話だ。力無きものはねじ伏せられる世の中。金や地位、名声に勝てるものなどあるのだろうか。

「愛とはトリガーですよ」

ティーカップを置きながら、男はそう言った。
そうだった、コレに聞いても参考にはならない。
彼は私が好きだからという理由だけで、私を連れて帰国し、名ばかりのメイドとしてこの家に置いている。

「始まりに愛があり、そこに金銭や権力、色々とトッピングし……行動に移す。守るべきもののためなら、多少は無茶するのです」

私の頭に手を乗せ、そのまま撫で始めた。
愛さえあれば何でもできる、とは限らないが、人を変えてしまうには充分な力があると言える。


Title「ただ一人への忠誠」
Theme「愛さえあれば何でもできる?」

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