大切な人がいなくなるのが怖くてわたしは一人でいるようになった。
もうあんな思いはしたくない。あんなに悲しむくらいなら最初からいないほうがマシ。
寂しくても一人で生きていける。
だけど、そんなわたしを放っとかないお人好しな人たちがいた。
わたしがどんなに怒っても、酷いことを言っても、いじわるをしても、その人たちは優しい目をしてわたしを仲間だと言ってくれた。
その度にわたしは泣きそうになったけど、グッと堪えた。泣くのなんて恥ずかしいしみっともないから。
……でもあの日、ついに我慢できなくなって彼らの前で大泣きしてしまった。
彼らはわたしが落ち着くまで抱きしめてくれた。
彼らが良い人なんてことはわかりきってる。わたしが信じきれなかっただけ。
彼らはわたしに大きな愛をくれた。
わたしは彼らみたいな愛を渡すことはまだできないけど、いつか彼らにも示してあげたい。
さしあたって小さな愛から渡そうと思うのだけど……
何をすればいいのかな?
町端のお花をあげるとか? それとも肩たたきとか?
愛を拒んでいたからどれくらいが丁度いいのかわからないや。
……まあ、じっくり考えてみようかな。焦らなくても彼らはいなくなったりしないのだから。
ぼんやりとスマホで見ていた動画が終わって、ごろりと寝返りを打つ。
窓から見えた空は抜けるくらいに青く、そこに一羽の鳥が横切って行った。
ああ、空はこんなにも自由なんだな。
そう思いながら体を起こす。
私も自由なのにどうして空は格別に自由だと思えるのかな。
そんな哲学じみた考えを抱いたけど、深く考えても今の私では答えにすら辿り着けない気がしてすぐに捨てた。
空は特別、空は偉大、空は無限大。
それでいいじゃない。
子供の頃はなりたいもの、やりたいことが多くあった。
でも今なりたいもの、やりたいものはその頃思いつきもしなかったものだ。
いつか某大型同人イベントでサークル主になること。
それが今の夢。
そんな私の子供の頃の夢はケーキ屋さんもしくはお花屋さん。
我ながらファンシーである。
ホラー映画を私の家で友達と鑑賞後、二人で感想を語り合っていたらオオォ……という唸り声のようなものが聞こえた。
それだけなら風の音かな空耳かなと思えたのに、クスクスという奇妙な女性の笑い声まで聞こえて、私の背筋は凍りついた。
友達は目を丸くし私を見て呟く。
「今のって……まさか」
「お、おおお、おば、おば、おばけ……!?」
「おいおい慌てすぎ。まさかホラー映画見た後にこんな体験をするなんてね」
「な、なな、なんでそんなに冷静なの!?」
「えー? 面白いじゃん。こんなの滅多に体験できるようなもんじゃないしさ。
……しかしあんた、ホラー映画は普通に見れてたのになんで今怖がってるのさ」
「リアルと映画は違うじゃん!!
ね、ねえ、お願いだから今日はどこにも行かないでほしいんだけど……」
私が友達に縋り付くように言うと、友達はグッと親指を立てた。
「こんな面白い家に泊まれるなんて願ってもないことだよ!
予備の布団ある? それとも一緒に寝ようか?」
「そ、……それは遠慮しようかな……」
びくびくしながらかなり早めに眠りに就いたけど、その後何事もなく朝が来た。
友達はがっかりしていたけど私は心の底からホッとした。
おばけとかゾンビとかは創作上だけで充分!
ひたむきに、ただひたすらに追いかけた。
君は私の憧れだったから。
だけどいつしか追い抜いて私が追いかけられる側になっていた。
そう自覚した途端に何もかもがつまらなくなった。
見なよ、今の私を。君としてはこんな私なんて許せないだろう?
私は君の背中を追っている方が性に合ってるんだ。
だからほら、早く追いかけてきなよ。
立ち止まるなんて君らしくないだろう?
……お願いだよ、起きてくれよ。目を開けなよ!
私を一人にしないでくれ……!