「えへへ」
思わずこぼれた気持ち悪い笑み。
急いで口を塞ぐが聞かれてしまったようで案の定私の頭にはチョップが来た。いてててて
一応頭をさすってみるが本当ば全く痛くない。
「笑ってないでさっさとやれ!!」
現在私は山のように溜まった提出物をせっせと書いている。
ワークにプリント、ノートまで、、、。
はぁ、、口には出さないで心の中でため息を着く。
「おい、ため息ついてる場合じゃないぞ」
あ、やべ。言っちゃった。
多分、2年前の私ならこの状況を最悪うううと言ってるだろうし、目の前の提出物を2倍の速さで終わらせるだろう。
しかし、今の私は違う。
なぜかって?好きだからだよ。
私は叶わぬ恋をしちまったのさっ!!!恋する乙女辛いっ!
そう、叶わぬ恋と言うのはこの先生、目の前にいる担任。
別にイケメンの部類では無い、いや、私にとってはイケメンだよ??決してディスってはないです。
これから先、告白する気も恋愛的にアプローチする気もない。でも、忘れられたくないし仲良くしたいという気持ちから毎日話しかけてる。
ちょっと仲良くなれた。多分。
現在3年。2年からの担任であるこの先生とも卒業でお別れだ。卒業したくねぇー、、
そう、卒業式はあの2ヶ月。
「卒業したくないです。まじで。」
ちゃんと提出物を書きながら言った。えらいえらい、、、、
って、先生いないし。
えまじでいない、どこいった、?
席を立ちひょこっと廊下を覗いて見た。居ない。
「おい、さっさっとやれ、何してんだ」
本日二回目のチョップ。いてててて
それからキュンキュンすることは何も無いまま1時間で提出物を終わらせた。
ふぅ、やっと終わったぜ。
「ふっ、やっと終わったか。お疲れ、よく頑張ったな」
チョップが来ると思い受身を取ると、来たのは優しいものだった。
ぽんっと1度だけ頭を叩き(優しく)下駄箱まで出迎えてくれた、なんてお優しい、、
この時間が名残惜しいが帰ることにする。さよーならー
帰ったら、まず勉強、なんてしないけどまずは形から。
机の上にさっきやったワークを置く、、ん、???
貼ってある付箋にギョッとした。
『よく頑張ったな、お前はすごいぞ』
「んふふふふふふ」今日2回目の気持ち悪い笑み。
絶対大事にしよ。この付箋
あれから5年、?私は同窓会にいる。
「先生、居残りしたこと覚えてます?」
あったなーそんなこと!どうやら覚えているらしい。うれしい。
バックから付箋を取り出す。
「私、この付箋で生きてきたんです。めちゃ勇気もらってます。」
突然の衝撃事実に先生爆笑。なんで、?
「なので!!!!そのお返しに!!手紙書いてきました!!!お読みくだせぇー!!!!」
封筒を開ける、どきどき。
読み始めた先生はにやにやとしていて楽しそうだった。
「ありがとう。俺もお前みたいに大事にしたい、」
酒飲まねぇとやってらんねぇぞ、これ、しぬ。
『大事にしたい』
ジリリリリリリリ
7時を知らせる音が鳴る。
いつもどうり起きて焼いたパンにバターを塗る。
今日はウキウキしている。なぜかって?彼に会えるからだ。
去年の今日。彼氏が出来た。
社会人一年目だった頃、同期とでもいうのか。
同じ会社で隣の席だった彼。
同い年というのもあってか上司の愚痴を言い合ったり、たまにはお互いの家で飲むこともあった。
彼とはそんなこんなで1年ほど親友をしていた。
「今日この後空いてる?」
いつもどうりの誘いにYesと答えた。
居酒屋の道とも違う、彼の家へ行く訳でもない。
珍しくタクシーに乗った私たちは知らない街へと走っていった。
「ねぇ、今日はどこいくの?」
「ん?着いてからのお楽しみぃー」
彼はどこかソワソワとしていた。
「ほら、着いたよ」
彼は二人分の代金を払い運転手さんにお礼を言ってから私の手を取った。
彼の手はまるで焼けるように熱く心做しか耳も赤く染っていた。
入ったお店はとても綺麗で落ち着くカフェだった。
好物のオムライスと適当に飲み物を頼んだ。
美味しい晩御飯を食べ終わった頃。
彼はモゾモゾとどこか落ち着かない様子で俯いていた。
「どうしたの?」
「いや、うん、あ、あのさ!好きです、つ、付き合ってくださいっ!!」
彼らしい、素直にそう思った。
少し不器用ででもすっごく優しい彼。
この人なら、、この人とならずっと幸せでいられる気がする。
「はい、喜んで」
それが私の答えだった。
今日は例のカフェに連れてってくれるそうだ。
また、ソワソワとしている彼に期待しつつお店に入った。
これから先、もっと幸せな日常が訪れるのかな、、
日常
「「せんせー今日もかっこいいー!!!!」」
私の担任、葉月先生はイケメンと言われる部類に入る。
今日もクラスの女子達が先生の周りに群がりキャッキャと楽しそうに話している。
見たくも無い光景から目をそらすと不意に足ほどが聞こえて来た。
「あなた、ちゃんと勉強してるんですねぇ、珍しい。」
「なんですか、先生も仕事してください」
現在進行形で仕事してまーす、とふざけた返事が聞こえてくる。
あぁ、もう話しかけないで欲しい。周りの女子から冷ややかな視線が集まる。
「ねぇ、あいつさなんか先生と仲良くね、?腹立つわー」
私の陰口。毎日言われる。先生のせいで。
「そこの君ー!放課後居残りなー教室に集合だかんな!」
葉月先生。呼び出しって、、、最悪。
「で、なんで呼び出したんですか。」
放課後2人きりの教室。
「いやぁ、、やっぱいいねぇ新鮮だわお前の教師とか。まじこの学校に異動願い出しといてよかったー」
「どーせ毎日あってんじゃないですか。家隣なんだから。」
そう、この教師は私の幼い頃からの遊び相手。
いつしかリアコになってしまったのは私の方からだ。
年の差はあったがそれなりにお互い好きだったのもあって付き合うことになった。
私は人と関わること自体結構ムリな性格だからか、人は寄ってこないしなんもしてないのに嫌われてく。
それに比べて先生は、、、。
今まで女子に囲まれてる先生とか目の前で見たことないし、それこそ想像したこともない。
担任になってから、イケメンで人に好かれるという事実を突きつけられた感覚だ。
毎日女子に囲まれて、しかも楽しそうに話す先生。
悔しい。
「おーい、お前聞いてんのか!」
ペシッとバインダーで叩かれる。
「きーてます、きーてます。」
「なにおまえ嫉妬してんの?あいつらに。」
図星だ。バレました?とわざとらしく聞けば、バレバレぇーと教師では無い彼の返事が返ってくる。
やっぱり、私の先生なんだなぁ。
私しか知らない彼の1面。
「雨雨雨雨雨雨雨。えぇ!?!?全部雨かよ!!!」
週間天気とやらを見て絶句した。
この私。くせっ毛最大の敵である梅雨が来てしまった。
通常であれば若干のうねりで済む被害が大爆発どころか世界終わるレベルなのだ。
「終わった。死んだ。私の恋終了だわ。」
私の初恋。いや、まだ2ヶ月、、、、、。
爆発を最小限にするため、アイロンとヘアゴムという仲間と共に必死に格闘する。
人に見せられるレベルまで抑えられた。
初恋というのは後ろの席の彼。イケメンな上に高身長。いわゆるモテ男、とでも言うのだろうか
彼は私にだけ優しい、いや自意識過剰かもしれない。
密かに脈アリ説を、押しているがこの爆発した頭を見られてしまえば引かれるかも、、、とか良くないことばかり考えてしまう。
ドクドクと、いつもより早い脈を感じながら電車へ飛び乗る。叫びたくなる気持ちを抑え教室に入った。
彼に挨拶をし一限目の準備を始めた。
今日に限って数学、、梅雨が最大の敵であれば絶妙にウザイモブキャラか、。
睡魔のせいでカクカクと下がっていく首を手で抑えプリントを回す。
不意に見える彼の顔に眠気なんてブラジルに飛んでった。
ありがとうなんて言われてしまった日には彼の声がまるで壊れたラジオのように一生再生されている。
ひとつに束ねられ強制的にまとめられた私の髪の毛。
今日はいつもの何百倍も酷い髪。
そんな髪を彼は暇つぶしのように指でクルクルと遊んでいた。
何この人、可愛いがすぎる。
再度キュンとする。これ、脈アリでしょ、。
下校時間。
私は何年か前にコンビニで買ったビニール傘を探していた。
どうやら誰かが間違えて持って言ったらしい。
そこには私のものでは無いビニール傘。
見分けが着いたのはまだ持ち手の部分にビニールが被っていたからだ。
人のを使う訳にも行かず、溜息をつきながら雨の中へ飛び出す。
「え、、ちょ!!まてまて!!!」
いつも後ろから聞いている声。すぐに足を止めた。
彼は私を追いかけ飛んできた。
はい、と傘を私の方へ傾け一緒に帰ろ、と誘う。
YES以外に答えなんてないのに、、と思いながら誘いに乗った。
なぜか耳が真っ赤な彼に疑問を持ちながらも歩幅を合わせ駅へ向かった。
彼は途中で止まった。まだ駅じゃないのに。
「あのさ、、好きです。付き合ってください、!」
もう、7年??懐かしいなぁ、、なんて。
もう社会人2年目になってしまった私たちは彼の家で思い出に浸っていた。
俺は「正直」が苦手だ。
だから、恋愛も上手くいかねーし、俺の周りからはみんな離れていっちまった。というか、不良だとか、日々暴力をしているだとか変な噂は立てられたせいか、みんな俺のことを怖がっていた。
別に悲しいとかねーけど、さっぱり寂しい、ような気もする。
いつも通り住み心地最悪な、教室からは逃げるように一人屋上へ行く。俺が屋上を使い始めてから屋上に来るやつはいなくなった。
いつも通り屋上のドアを開けた、だが目の前の光景に動きを止めた。
人がいる。女か、、転校生か?見た事ねー背格好だな。
小柄なそいつに吸い込まれるようにして俺は歩いた。
「なぁ、こんなとこで何してんだ」
我ながら怖え言い方になっちまったことを、申し訳ねーと思った。
思った通りそいつはビクビクと怯えてそのままドアへ一直線に走ってった。
反射的に掴んでしまった腕。
「あ、悪ぃ。お前、転校生か、?」
できるだけ優しい声でよくわかんねぇ質問をした。
「そ、、そ、そうです」
やっぱり怯えながらそう答えた。
こいつ、、かわいーな。
いや、違う。そんなこと思っちゃいねーよ、好きとか、そんなんじゃねぇ。
そう心に言い聞かせた。
その後いろいろあって一緒に飯を食うことになった。
「お前の弁当美味そうだな、からあげ1個くれよ。あ、俺のウインナーやるから、」
「タコさんウインナー可愛いね、美味しそう」
小さな笑みをこぼした。顔に血液が集まるのを感じ目をそらす。
「な、なぁ、俺と友達になってくんねーか?」
タコさんウインナーを、頬張りながらコクコクと頷いた。
嬉しかった。初めて正直にそう思った。
そして、現在。俺は社会人5年目を迎えた今年。あいつとは同棲した。
いつか、結婚したいな、なんて。
高校の時よりかは、多少丸くなったと思っている。
よる9時、家に帰ると彼女は晩御飯を作っていた。
今日のメニューはタコさんウインナーらしい。思い出の品だから、と言って晩御飯とは思えないメニューだが、彼女の一番好きなメニューだ。
「「いただきます。」」
手をおわせそして、橋を握る。
可愛い顔をしたタコ達を口の中に放り込んでいく。
「なぁ、俺のプリン食っただろ」
「えぇー知らないなぁー」と、しらばっくれる彼女。
「こらっ!うそつんじゃねぇ!」クスクスと笑う彼女。
あぁ、幸せだなぁ。
あのプリン、本当はは彼女のために買ったなんて絶対言えねぇ。
彼が「俺のプリン」とか言いながら本当は私のために買ってると、知っている。だって、、寝言で言ってたんだもん。
ごめんね、と彼には一応謝っておく。
「ごめんね」