学校はつまらない。とても退屈だ。
そんな風に思っていたのはつい2ヶ月前までだ。
2ヶ月前、私は恋をした。叶わない恋を
「せんせ!またなんか実験してんの?ほんと好きですよねぇー、」
そう、私の初恋を奪った彼。理科教師で実験まみれの生活を送っている。理科オタクとでも言うのか、、
そもそも私は理科が好きじゃなかった。だから、彼の理科も好きじゃなかった。
授業も何時でも寝ていたし、テストも散々だった。
そんな私は、テストの度に居残りになり帰宅部なのに帰るのはいつも6時だった。
いつもの居残り。先生はいつもと違った。
「なぁ、俺の授業つまんねぇか?」
沈黙の中先生が呟く。まだ私が先生をすきになる前だった。
そう聞かれて何も答えられなかった。
「わかった、よし、、いつもどうり補習始めんぞ」
少し悲しそうな先生、初めて見た。
申し訳ない、そう思ったけどそれ以外何も思わない。
お前このままじゃ受験落ちるぞ。そう言って毎日補習にさせられた。
そのおかげか点数は伸びた。赤点まみれだったのに50点、80点と目に見えて伸びていった。
いつしか私も理科オタクになってしまった。
もしかしたら理科オタクのふりなのかもしれない。
先生に近づくための嘘なのかもしれない。
天体観測、先生は今日月の観察をするらしい。
夜中の2時、こっそりベランダに出て空を見上げる。
満月だ。
綺麗だなぁ、今先生も空を見ている。
流れ星でもないのに願ってしまった。
「先生、、好きですよ、」
月に願いを
満点の星空の上、2人は出会う。
天の川にかかる赤い橋、それは2人を繋ぐ奇跡の橋。
一年に一回だけ出会うことの出来る2人は、今年も出会う。
「きれいね」
キラキラと光る天の川。
彼は「うん。」と質素な返事を返してくれた。
神様がくれた奇跡の日を私たちは満喫する。
とくに話す訳でも無く橋の上に2人っきり、横に並んで眺める川。
いつも見ている星たちもこの日が一番綺麗だと私は自信を持って言える。
ふと彼の横顔を除くと彼もこちらを見る。どちらからというわけでもなく微笑みがこぼれた。
「あなたの事を愛しています。」
「僕も愛してる。」
年に一度っきりの特別な日、私たちはまた1年後の約束をした。
一年後。
「何もいらない。」人間そんな綺麗には生きられない。
私も欲にまみれた人間の一人だ。
化粧水、ファンデ、リップ、服欲しいものなら沢山ある。
私がもっといい私になるための物。
それは、私のたった一人の大好きな人。隣の席の彼。
その人のためのものだ。
何もいらないなんて言えない、けどあなた以外何もいらない。
何もいらない。
遠くで先生の授業をする声が聞こえる、私は夢の中へ入りかけていた。
外を覗けば桜。綺麗にヒラヒラと落ちていく花びら。道路はすっかり花道になっていた。
「おい、外見てねーでこっち見ろ」先生の声がして慌てて前を向く。
先生に恋をして1年。先生は今日指輪をしていた。
そして散る、恋の桜。
私の心の中にはピンクの花道が出来ていた。
桜散る。
―――今日17時から好きという言葉が禁止されます───
朝のニュースで突然発表された。
「え、好きって言えないってえぐくね!?」教室ではその事でもちきりだった。
「まじ好きだよ愛してるっ♡」友達に最後の好きを伝える人。
「好きです。付き合ってください。」勇気を出し好きを伝える人。
「今日も明日も大好きだよ」いつもの好きを伝える人。
世の中は様々な「好き」で溢れた。
とうとう17時まであと1時間をきった時、今日最後のチャイムが鳴る。
それぞれ家に帰っていく中私は彼を待っていた。
彼と付き合って今日で一年。
まだ彼は私に「好き」と言ったことがない。
それは彼がストレートに言うような性格じゃないし彼からは好きというのが伝わってくるから私は気にしていない。
けどやっぱり言って欲しいなぁ、なんて思ってしまう。
そんな彼との2人きりの帰り道、家に帰るまで「好き」とは言ってくれなかった。
でも、別れ際15時を知らせる市の放送と同時に、、
彼は私にハグをした。
言葉にできない。