小5の夏、母の再婚をきっかけに再婚相手の娘が来た。
あいつとは同い年だけど俺の方が早生まれで、俺は兄になった。
俺には女友達どころか、女子と話すことさえない。
最初はお互い一言も話さなかった。
でも、3年経った今俺たちは毎日ゲームをする仲にまでなった。
あいつは俺の事を「兄ちゃん」と呼ぶ。
俺はどうだろうか、、「あいつ」「お前」名前ですら呼んだことがなかった。
あいつが妹だと思ったこともない。
あいつは、、、
初めての女友達。そして、初めてできた好きなやつ。
今日も俺は「兄ちゃん」のフリをする。
誰よりあいつと一緒にいるのに
誰よりもずっと遠い存在。
あぁ、来世は違う世界線でありますように、そう願った。
誰よりもずっと。
小学生の夏休み。
母には「天体観測」と、嘘をつき隣に住む女の子と公園によく遊びに行っていた。
彼女の引越しが決まってから1週間。
最後の夜に彼女とまた、公園へ行った。
その日は晴天。
人生で1番綺麗な星空だった。
でも、、今は違う。
仕事終わり、「いつものとこいるよー」彼女からのLINEを見て足を早めた。
階段を駆け上がりドアを開けると、「遅いよ!」と缶ビールを持ち上を見上げる彼女。
「今日は、星が綺麗だよ」と言うので顔を上げる。
そこには満天の星空が広がっていた。
世界一綺麗な星空の下、僕たちはキスをした。
星空の下。
「ただいま、、、、」
遅くなってごめん、と、謝罪を述べようとしてやめた。
ドアを開けた瞬間、目の前で彼女が寝ていたからだ。
彼女と同棲を初めて2ヶ月、僕は新たに発見したことがある。
それは、彼女がどこでも寝てしまうことだ。
今日は玄関。
昨日はソファの下。
一昨日は、、、どこだっけ。
体が痛くなりそうだし、やめて欲しいけど、
寝てしまった彼女を「しょうがないなぁ」とそっとベッドまで連れていき、こっそりほっぺにキスをするのが結構好きだ。
だから、それでいい。そのままでいいよ。
そう言った彼はまだ知らない。
私が毎日ほっぺにキスをして欲しくて寝たふりをしているということを。
夜9時、
通知音とともに『もうすぐ着くよ』と、彼からのLINE。
既読は付けずに「次はどこで寝たふりをしようかなぁ」と考え始めた。
それでいい。
付き合って2年経つ彼女からメッセージが来た。
『ねぇ、一緒に住まない、?』
つい口に含んだコーヒーを吹き出してしまった。
残念ながら気に入っていたパジャマはすっかり茶色に染まってしまいやむを得ず捨てた。
この出来事からもうすぐ1年が経つ。
朝起きると、隣ですやすやと寝息をたてる彼女。
そっと布団から出てコーヒーを入れにいく。
10分程すると、、
「うわっ、めっちゃいい匂い、コーヒー?私も飲みたい!」
朝とは思えないほど元気な声。
元々寝起きのいい彼女は朝から元気だった、その声に毎回目を覚まされている。
2人でゆっくりコーヒーを飲みながら朝の情報番組を見る。
一つだけ願いが叶うなら何がいい、と言うテーマでインタビューの映像が流れる。
「一つだけ、ねぇー、何がいいかな」
彼女が呟く。
テレビのリモコンを掴み、電源ボタンを押すとパチッとテレビが消え2人の空間になる。
一つだけ、俺の願いが叶うなら、、、
「お前と結婚したい。」
それが不器用な俺の初プロポーズだった。
一つだけ
『飲みにいこー』唯一の男友達にLINEを送ると、直ぐに既読が着いた。
『いつものとこなー』と、軽い返事。
言われたとおりに「いつもの居酒屋」へ行く。
もう彼は先に着いていた。
「「かんぱーいっ」」カツンッとグラスが当たる音と共に日々の疲れを癒すべく喉にアルコールを流していく。
遠くで「飲みすぎんなよ」と、いつもの声がした気がしたが気にしない。
何時間経っただろうか、夜の街が賑わい始める頃。
「ほら、もう終わりにすんぞ」と、グラスを取られる。
睡魔に襲われながら、彼に体重を預け駅に向かう。
家に着いた頃には午前0時を回っていた。
「我が弟よぉー大きくなったなぁー!!はっはっは」酔っ払いはよく喋る。彼の頭をわしゃわしゃと掻き回しているとその手はベッドに寝かされた。
私をベッドに下ろした彼は寂しそうに帰って行った。
「俺は弟じゃない。お前が好きだ、。」
ドアを閉める直前、俺はそう呟いた。
どうやら俺も相当酔いが回っているらしい。
あいつの大切な"者"になれたらな。
大切なもの。